第26話 戦場《せんじょう》の再会《さいかい》

 ひときわ大きな爆発ばくはつきて、エドワードたちがばされる。

 かろうじて立っているのは、勇者ゆうしゃのキョウコに騎士団長きしだんちょうアルス、そして聖女せいじょリリアと賢者けんじゃマーロンの勇者ゆうしゃパーティーの四人だけだ。


 エドワードが大剣たいけんつえがわりにして立ち上がろうとする。キッとちゅうをにらむと、「くそったれが」とつぶやいた。


 その視線しせんの先にはちゅうかぶ四つの人影ひとかげがある。魔王まおう四天王してんのう黒騎士くろきしカロン、ダークエルフの魔道士まどうしバアル、サキュバスのアスタロト、死霊王しれいおうテストリだ。


 さっきの大爆発だいばくはつはバアルのはなったものだった。

 四天王してんのうはすうっと地面じめんにおりて、勇者ゆうしゃたちと対峙たいじする。


 カロンが赤い目を光らせて、魔剣まけんダーインスレイブのさきをキョウコにけた。

 「勇者ゆうしゃよ。さきたたかいのりをここでかえすぞ」

うと、一気いっきにキョウコのところへはしんできた。

 そこへキョウコをまもろうとアルスが立ちふさがるが、そこへアスタロトのムチがおそいかかり、よこにはじきばされた。


 すぐに体勢たいせいととのえたアルスのまえに、アスタロトがいろっぽいみをかべる。

 「ふふふ。アナタの相手あいてわたしよ。だれにも邪魔じゃまはさせないわ」

 アルスは冷静れいせいに剣をかまえた。

 「悪魔あくまめ。この宝剣ほうけんディフェンダーで成敗せいばいしてくれよう」

 アスタロトはたのしそうにわらいながらムチを手でしごいた。


 一方、バアルは賢者けんじゃマーロンと魔法まほういをしている。

 次々つぎつぎはなつバアルの魔法まほうと、寸分すんぶんたがわぬ威力いりょく魔法まほうはなって相殺そうさつするマーロンに、バアルは、

 「ほお。人間にんげんのくせになかなかやるな」

感心かんしんしていた。


 そのこうではテストリと聖女せいじょリリアが対峙たいじしている。

 「ぐふふふ。うつくしいおじょうさん。して配下はいかにしてさしあげましょう」

 そういいつつ骸骨がいこつのついた不気味ぶきみつえの先が光ると、テストリのまわりの地面じめんから二十体のスケルトンナイトがあらわれた。

 それを見た聖女せいじょリリアは、むねのペンダントについている聖印せいいんにぎり、

 「いのちをもてあそぶ邪悪じゃあく悪魔あくまよ。かみまえでは無力むりょくりなさい」

というと、その聖印せいいんから光がはなたれ、スケルトンナイトを次々つぎつぎちりにしていく。

 それをみたテストリはたのしそうにわらい、

 「では、次々に行きますよ。どこまでえられますかな?」

った。

 そのまわりにはすであたまよろい死霊しりょうデュラハンが5体、ひかえていた。先ほどのスケルトンナイトのでないほどつよ瘴気しょうきはなっている。

 それを見た聖女せいじょ表情ひょうじょうがこわばるが、聖印せいいんつよにぎる。

 「何が来ようとけません!」


 こうして四者四様よんしゃよんようたたかいがはじまった。


――――

 キョウコが必死ひっしにダーインスレイブの斬撃ざんげきながしている。

 「くぅ! 前より……つよい!」

 カロンはどうもうみをかべ、一端いったん距離きょりる。

 「たりまえだ。ここは魔大陸またいりくダッコルト。我ら魔族まぞくの力が思う存分ぞんぶん発揮はっきできる瘴気しょうきがうずまいているってわけだ。……簡単かんたんわってくれるなよ?」

 ダーインスレイブに血管けっかんのような光が脈動みゃくどうする。

 瘴気しょうき魔力まりょくがカロンにあつまっていく。キョウコは光魔法ひかりまほうを剣に付与ふよしてかまえた。


 「くらえ!」

 カロンが目にもまらぬはやさで、キョウコにおそいかかった。

 上段じょうだんからのとしに、キョウコはながそうと剣をり上げた。

 その瞬間しゅんかん


 パキィィィン


んだおとを立てて、キョウコの剣がぷたつにとされた。


 一瞬いっしゅん、ほうけた表情ひょうじょうになったキョウコのおなかに、カロンのりがたたまれて、キョウコがんでいく。

 大木に背中せなかを打ち付けたキョウコは、力なく崩れ落ちた。その口から血がどばっと吹き出る。


 そこへ、アルス、リリア、マーロンが、同じようにばされてきた。

 キョウコはを手のこうでぬぐって正面しょうめんを見る。そこにはまだまだ余裕よゆうのある四天王してんのうが並んで立っていた。


 バアルが、

 「勇者ゆうしゃもこれまでだな」

って、手にしたつえ魔力まりょく集中しゅうちゅうさせると、その杖の先にくろ火球かきゅうまれ、どんどん大きくなっていく。

 それを見たリリアがあおざめて、

 「もう魔力まりょくが……」

とつぶやいた。


 アルスがよろよろと立ち上がりながら、キョウコたちの前に立ちふさがった。

 「われらの希望きぼうころさせはしない」

 それをいたバアルがむしけらを見るような目で、

 「愚劣ぐれつ人間にんげんめ。希望きぼうなどないのだ。……もう500年もむかしからな」

といい、直径ちょっけい10メートルになった黒火球こくかきゅうはなった。


 アルスがこしとしてり、両手りょうてを広げて雄叫おたけびを上げる。

 「うおおおーー!」

 火球かきゅう容赦ようしゃなくアルスをもうとせまったとき、その目前もくぜんで光の障壁しょうへきあらわれて火球かきゅうふせいだ。


 バアルがきっと森の中をにらんだ。

 「おまえか! フローレンス!」

 林の中からダークエルフの神官しんかんフローレンスがあらわれた。

 「バアル。こんなことは、ミニーもかなしむわ。もうやめて!」

 バアルの全身ぜんしんから瘴気しょうきが立ち上る。その目は赤く光っている。

 「ふざけるな! やつらが! 人間にんげんどもが! 守ってやったのに、ミニーに何をした! ゆるせるものか!」


 それをおもしろそうに見つめるバアル以外いがい四天王してんのうたち。アスタロトがくちびるをなめて、「ふうん」とつぶやいている。


 フローレンスはキョウコたちにちかより、魔法まほう怪我けが回復かいふくさせた。

 「バアル。わたしがあなたを止める。ミニーの親友しんゆうとして、……そして、あなたの親友しんゆうとして」

 そういったフローレンスはバアルと対照的たいしょうてきに白いかがやきにつつまれた。


 バアルとフローレンスが同時どうじに走り出す。

 バアルが漆黒しっこく魔法まほうやりはなつと、フローレンスは白銀はくぎん魔法まほうやりむかつ。二人だけのたたかいがはじまった。


 アスタロトは二人のたたかいをちらりと見て、

 「あっちもおもしろそうだけど、アナタたちをさっさとかたづけてからのゆっくりたのしませてもらうことにするわ」

う。


 そこへ林の中から一本のけんんできて、キョウコのまえに刺さった。


 四天王してんのうやキョウコたちがんできた方の林を見る。


 エドワードたちが、

 「「「ヒロユキ! コハル!」」」

おどろいたこえを上げた。


 さやに入った剣がキョウコにかたりかける。

 「勇者ゆうしゃよ。われけ。われ聖剣せいけんフラガラッハなり」


 キョウコは立ち上がり、そっとつかにぎる。

 「フラガラッハ。わたしに力をして!」

 すらっときはなった刀身とうしん青白あおじろく光りかがやいていた。

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