読解力とラブレター

叶 遥斗

感想

心が鎮まる原風景

https://kakuyomu.jp/works/1177354054880960176

📖吟遊詩人の幻想曲

作者 烏合の卵さま


好きという感情は他者からは共感の得られる場合とそうでない場合とがもちろんあるので、ここで私が何を言っても始終「はぁ?」といわれるレベルの内容となる可能性も念頭において、その上でただ私が好きな作品を語っていることはご理解いただきたい。私にとってはこの作品は『心が鎮まる原風景』、平たく言えばその一言に尽きる。自分のなかにあって、それもわりかし根深い部分の、土台が。共鳴しちゃう作品はそう多くない。こどものころから抱えてる、どこでみたかもわからないような、それはもう現実の記憶だったかさえもさだかではなくて、あやふやに存在するもの。作品に触れるたび心の奥が共鳴するのだから認めざるを得ない。そこに何かがあってこの作品が届くのだ。


好き。多くの他者にも伝わるように解説するにはこの感情は厄介で、何せ自身でも正体を掴みきれていない謎の存在だ。とにかく好き。もうそう言い続けるしかない。それでもまだ足掻いてどこがどう好きとか根掘り葉掘り追い求めるのもロマンだ。それは自分史という遺跡発掘みたいなものなのだ。


主人公。こんなに落ち着いた主人公がいていいのだろうか。いいのだ。大地のような安定感。地震や噴火が起きようが別にどうってことないよ、そんなのオチャノコサイサイだよ顔でとんでもグランドロマン。自分何言ってルかヨクワカラナイヨ、ニュアンスだけ汲み取ってください。とにかく次元が別格の主人公。いい。心の凪。すごくいい。でも周りはなんだかんだ激動。大なり小なり実は大変なことになってる。主人公が平常心だからうっかりしてたら気付かないけど、それ大事件ですからね?みたいなトーンがシュールで超素敵。読者が脳内で状況を捌いて、それとは別に異質な主人公にも寄り添えることができれば大変美味しくいただけるはずなのです。そういう意味では読者を選ぶ作品かもしれないし、私みたいな変人が釣れてしまう事故を招きやすい性質があるのかもしれない。でも普通の人が共感しないのはあたりまえ、普通じゃない主人公をどこまで理解できるかはほぼ賭けみたいなものでしょうし、だからこそこの作品がこうして世に解き放たれていることには感謝の念が尽きないわけです。皆さんももっと晒していいのよ?私が嬉しい。一部の独特なマニアック向けは私のためにあるといって過言でなし(それは過言)。言いつつも私のマニアックな作品は頻繁に封印されるのですが(そこは一旦おいといて)。


世界と距離がある。いや逆に世界が常に意識にあってその距離感がはかれることは実はとんでもないこと。人は漠然と生きていて自分と世界の関係性なんてほとんど無意識で、目の前の日常の中で個々は生きている。けれど主人公からはいつも世界が感じられる。世界ってなんだ、自分以外のすべてか。自分の立ち位置は世界のどこなんだ。座標なのか役割なのか神話のように力は影響し干渉し流れ重ね、物語は綴られる。主人公の周りには魅力的な人物たちが、でもどこかそっと、出すぎない奥ゆかしさを伴いながら、強引に捩じ込んで物語を引っ張るのが好き。無理じゃない。その無茶苦茶には愛すら感じる。動かないものを動かす、やがて動く。静かで、深くて、熱いもの。


意図せず哲学的思想が胸に渦巻いてやまないあなたに贈る『吟遊詩人の幻想曲』。是非に。


(私が日本語不自由しているので、どこか誰か神レビューで素敵に語ってもらいたい。私レベルでは到底力及ばぬよ……!)


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