短編「オレオ」


僕は研究員をしている。なんの研究をしているか、という質問は好きじゃない。理由は至って単純だ。カクヨムに現れた未確認生命体、オレオの研究をしているからだ。

黒く可憐なオレオは、突然現れ、すぐに姿をくらませた。

三文字で構成された未確認生命体オレオは、複雑に絡み合った情報網を、いとも容易く交わして見せる。それに魅力された者がいた。言わずもがな、僕である。

これはある日のことだ。オレオが沢山に分裂したのだ。まるで、単細胞生物のように。

衝撃のことであった。オレオには、子孫を残すという、概念があったのだ。

そのことから、僕は一つの過程を導いた。オレオが三文字で構成されているのは単細胞生物のように分裂するためではないかと。

理由はあまりにも単純で、くだらない。

単純で、簡素な生命体であるオレオは、複雑な組織を兼ね備えてはいなかったからだ。

太古の昔、地球上に性を持つ生き物がいなかった時代。生物の繁殖方法は分裂であった。自らの持つ遺伝子を鏡に写したかのようにコピーし、分裂した細胞におすそ分けしていた。

それは、遺伝子を半分失うことになる。一つの遺伝子で構成された単細胞生物には、失った片方を修復することは容易いことである。

単細胞生物のオレオは、分裂を繰り返した。あるオレオは性を持ち始め、それは、ゆったりと進化していたオレオにとって、進化の起爆剤となった。

今では、様々な生命体へと進化している。初期は三文字だけだったオレオは、千文字を超える多細胞生物へと進化した証拠もあり、過酷な環境へと適応するため、あえてそのままでいる個体もいた。

オレオは神秘であった。まるで、古代の地球を表しているかのようで。僕は魅力された。けれども、淘汰されゆくオレオもいた。

僕はそっと、ノートを閉じる。マグカップに注がれた珈琲を飲み干し、一つ溜息をついた。






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