第14話 西暦2XXX年 一つの時代の終演
今日、数十年越しの計画が終了する。
N国で行われた電力供給ケーブル地下埋設工事が終了し、N国最後の電柱が撤去されるのだ。
お国柄、とは言うまい。大体どの国でも最後、と聞くと人々が集まるものなだから。数日前から集まった人々は携帯端末で写真やら動画やらを撮っている。
こんな片田舎までご苦労様なこった、と作業員のA氏は思う。
実際A氏には電柱に何も思い入れなどなく、彼らが一体何故わざわざ電柱の撤去など見物に来たのか理解できないのだ。
無くなったところで別に困りもしないと言うのに。何を大騒ぎしているのやら。
これがA氏の感想である。
作業は順調に進み、他の撤去と同じく特筆するような出来事もなく完了した。
合わせて人々も三々五々散っていく。
思い返せばいつもこうだ。普段は気にも止めないくせに、いざ閉店だのと知れば大挙して押し寄せる。
閉店を発表したらとたんに売り上げが増えた、なんて笑い話にもならないというのに。
彼らは本当は何を見に来ているのだろうか?彼らが見ているのは目の前にある物なのだろうか?
彼らは本当に、失われるものを惜しんでいるのだろうか?
A氏はそんな場面を目にする度にそう考えるのだ。
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