俵将継 〜タワラマサツギ〜

3月31日


「プロデューサー、何見てんの?」


 もうそろそろおじさんと呼ばれてもおかしくはない年齢になりつつあるのにもかかわらず、未だに若々しい声を保っている俵将継さんは僕の背後からパソコンの画面をのぞき込んできた。


「将継さん、いつも言っているけれど勝手に人のパソコンをのぞき込まないでください」


「俺は、プロデューサーが人目を忍んで人には見せられないような画像を見ていないかチェックしているだけだから気にしないで」


「気にするし、余計な心配だよ。今日はただ昨日撮った写真を確認していただけだから良いけれど、いつも注意しているのは周りに見られたらいけないような重要な資料を作っている時もあるから言っているんだよ」


 最も、その様な重要資料を作る場合はプロデューサールームに籠って作業をするが。


「あぁ、それは素直に申し訳ない」


「わかってくれたならそれでいいよ」


 いつもは怒ることなどないからなのか、僕が少し強い口調で言っただけで将継さんは申し訳なさそうに床を見つめて明らかに元気を失っていた。

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