田野秋穂 〜タノアキホ〜

1月27日


「お疲れ様です。今戻りました」


 毎月最終金曜日の午後に行われるプロデューサーミーティングを終えてプロジェクトルームへ戻ってくると、プロジェクトルームの扉を開けた途端に甘くて美味しそうな香りが僕の鼻を通って行った。


「プロデューサーお帰りなさい」


 即座に僕の声だと気が付いた田野秋穂さんはプロジェクトルームに備え付けてあるキッチンから顔を出し、そう返してくれた。


「美味しそうなにおいがするけれど何か作っているの?」


「真ちゃんたちとクッキーを作っているんです。そうだ、最初に作ったクッキーがついさっき焼きあがったので良かったら食べませんか?」


「良いの? じゃあ、お言葉に甘えてもらおうかな」


 そう答えると秋穂さんは満面の笑みを見せてキッチンから大皿に盛られたクッキーを持ってきた。


「まだ熱いですから気を付けてください」


「わかった。ありがとう」


 秋穂さんの忠告通り手に取ったクッキーはまだ熱かったが、生地も味もしっかりとしていて何枚でも食べることが出来そうな癖になる味だった。

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