妖真暮 〜アヤカシマグレ〜
「さぁ、始めようか」
マイクを通しておどろおどろしく変化するボクの声の後、鐘の音が12回鳴り響いた。
「今日初めてここに誘われた皆さんは初めまして、ボクの時間に囚われた事のある皆さんはこんにちは。この時間はボクこと妖真暮の『アヤシイラジオ』をお送りしよう。わずかな時間だけどよろしく」
いつも通り代わり映えのしない台本にクドさを感じつつも安心感を覚えながらボクはタイトル通りアヤシイ雰囲気のジングルに耳を傾けた。ジングルが終わり一呼吸を置きボクはマイクに向かって語り掛けた。
「さて、先週、先々週と夏休みを貰っていたボクは半年振りに父方の祖父母の家に遊びに行ってきた。このラジオに長い事囚われているリスナーにはおなじみになってしまっているみたいで、ボクの行動を先読みしたメールが届いているようだから紹介しよう。ペンネームは『ダークエンジェル』さん。これは、堕天使の事を指しているのか、もしくは光を知った悪魔の事を指すのか……おっと、追及はやめておくとしよう。『真暮さんこんにちは、今年も夏休みという事で大好きなおじいさん、おばあさんの家に遊びに行ったことと思います。そこで質問なのですが、真暮さんはおじいさん、おばあさんの前でもいつもの口調 なのでしょうか? 囚われの身でありながら質問誠に申し訳ございません』か、長期休暇の度に同じようなメールが多く寄せられているからいい加減答えてあげよう。この口調がボク自身であると思っているリスナーには夢を壊してしまう発言になってしまうけれどしかと聞いて欲しい。ボクであろうと祖父母の前では普通の口調だ。プライベートくらいは素を出しておきたいものさ。まぁ、親族はこっちのボクを求めているけれど」
ボクは口外厳禁とは言われていないが暗黙の了解的に言わないようにしていたアイドルとしてのボクと一般人としてのボクについてをサラリと語った。
そうしているうちに僕のラジオという限りある時間は残りわずかとなってしまっていた。
「そろそろ時間のようだ。最後に予告をさせてもらおう。来週からは今までのようにボクの仲間が遊びに来るらしい。楽しみにしていてくれ」
ボクがそう言い終えるとアヤシ気なエンディングテーマがゆっくりと流れ、ゆっくりとフェードアウトした。
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