佐川剛 〜サガワタケシ〜



 快晴の中、佐川剛は大粒の雨を浴びていた。


「プロデューサー、俺に風邪をひかせる気か!」


 今回の仕事が自らの意思で決めたものではない剛は仕事を終えるとすぐさまバスタオルを頭から被り、今回の仕事を勝手に決めたプロデューサーである川野流に噛みついた。


「まぁ、そう言うな。水に濡れた剛はいつもより格好良いぞ」


「そ、そうか? って違う! 危うく丸め込まれる所だった」


「チッ」


「今、プロデューサー舌打ちしただろ? したよな?」


 しかし、流は剛の言葉を右から左に受け流した。


「聞けよ!」


「さっきから剛は何が言いたいんだ? 彩香や紗香よりもコミュニケーション取りにくいぞ」


「だから、前から言っているけどな、俺は歌を歌う仕事だけをしたいんだよ!」


「それは知っている。だからこの仕事を持って来てやったんだろ」


「嫌がらせか!」


 そう言われた流は剛に冷たい視線を向けながら呆れたように言った。


「どうせ覚えていないだろうから言っておくが、この仕事は次の新曲のジャケット写真の撮影だって2週間前に伝えたはずだぞ」


「し、仕事の直前にも教えてくれよ!!」

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