和水プロの日常

姫川真

川野プロジェクト女性アイドル編

秋砂美月 〜アキスナミヅキ〜

秋砂美月、高校一年生でアイドル一年生である。


その少女は学年末というこの時期に高校生としてもアイドルとしても危機に瀕していた。


「プロデューサー! 先月のお給料が1円も入っていないのですが」


美月の声は彼女が今いるフロア全体に響き渡っていた。


「仕事も無いのに歩合制で給料を受け取っているお前に給料が入る訳が無いだろ。それより、学校から事務所に電話が来たぞ。テストでまた赤点を取ったらしいな」


アイドルになってから受けた4回中4回のテスト全て同じ教科で赤点を取っている美月にプロデューサー兼マネージャーである川野流は呆れかえっていた。


「アイドル活動で勉強が疎かになったなんて言い訳はしませんけど、アイドルになる前から勉強は得意ではなくて……」


美月は「でもでも」と続け「小学校と中学1年生の時は今よりも勉強出来ましたよ」と無いと言っても問題は無い胸を張ってそう言った。


「美月の言い分はわかった。そこで朗報だ」


流は脇に抱えていたカバンから十数枚の紙の束を取り出し、美月に手渡した。


「インターネットの動画投稿サイトで放送されているクイズ番組の出演が決まった。美月が出演するのは高校一年生のアイドルばかりが出演する回らしい。うちの事務所は美月にバカキャラは求めていないのだから今渡したテキストでしっかり勉強しろ」


「はい、わかりました」


美月は元気の良い返事をした。



数週間後の収録以来、美月はおバカアイドル枠で全国的に人気になるのだが、この時は誰もそのような未来を考えてはいなかった。

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