第110話 かき氷大会
『第一回かき氷大会が開催します。参加される方は舞台の上に上がってください』
かき氷大会はグループで参加することになってる。制限時間内にグループ内でどれだけ食べれるかを競い、1番たくさん食べたグループが優勝だ。
3人で1組だから私のグループは私とクリリとタケル。お店は休憩中にしてる。
このかき氷大会には家族で参加してる人たちも多い。優勝賞品が冷凍庫ということも理由の一つだろう。
私が狙ってるのは冷凍庫ではない。準優勝の賞品だ。なんと!猫ちゃんがもらえるそうだ。
「いい? 準優勝を狙うのよ!」
「はぁ。猫なんて買えばいいだろう。何もこんな大会にでなくてもいいじゃないか」
タケルはプリーモ商会主催のこの大会に出たくないみたい。でも大食いのタケルをメンバーから外すわけにはいかない。
「猫はこの辺りでは売ってないの。絶対手に入れるわよ。タケル本気出さなかったら当分夕食抜きだからね」
やる気なさげだったタケルは私の言葉にビクッとした。クリリまでビクッとしたのは誤算だった。
参加者の中には無料でかき氷を食べれるから参加してる人たちもいるみたいだったが、私達同様本気丸出しの家族も多数いるようだ。
「絶対に冷凍庫手に入れるぞ!」
この家族は冷凍庫狙ってるのみたい。1位はいくらでも譲るからね。ガンバレ。
「猫を人間に渡すな。俺たちのものだ!」
猫の獣人。どうやらベスさんのお父さんみたい。別に人間が猫を虐待してるわけじゃないのに失礼だよ。プンプン! この辺りで猫はあまりいないから気になるのか賞品の猫が籠の中から鳴く度にオロオロしてる。
「では始めます。合図がなったら始まります。制限時間は20分です」
かき氷がイチゴ味だけみたい。差が出ないように何個か作って配られてる。
『ビーィィ』
合図と同時にスプーンを取って食べ始めた。
シャリシャリとスプーンですくいかき氷を急いで口に入れる。3口目で頭がキーンと響く。
「い、痛い」
「うぅ、響く」
私とタケルはキーンにやられた。すっかり忘れてたが、冷たいものは急いで食べるとキーンとなるんだった。でも条件は同じはず。ん? なんで? 何故か私とタケル以外は平気でかき氷を食べてる。スプーンを使わずに手掴みで食べる猛者もいる。クリリ1人で頑張ってくれてるけどこの間は大きかった。
「キーン」から立ち直ったときには勝敗は決まってた。すごい勢いで食べ始めたタケルだったが無念。時すでに遅し.......。
「優勝は冒険者クラッシュチームです。準優勝は猫の貸本屋チームでした」
ううぅ。猫ちゃん。
「ナナミさん、ごめんね。頑張ったんだけど.....」
いいのよクリリ。私の我儘で大変なことさせたね。
「.......本気出した」
おーい、タケル、言うことはそれだけ? まあいいか。
「もういいよ。キーンのせいだし。この世界の人はキーンがないんだね。身体の作りが違うのかな」
「キーンさえなければ優勝できた」
タケルが呟く。いやいやタケル。優勝は狙ってないよ。
猫ちゃんは残念だったけど、夏祭り楽しいね。
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