第106話 豪華版かき氷機
プリーモ商会のルイスさんがやって来たのは夏祭りの2日前だった。夏祭りまでには『豪華版カキ氷機』を作るように言ってるとタケルが言ってたけど本当に出来るとは......。ルイスさん疲れたような顔してるよ。でもなんだか誇らしい顔にも見えるから出来たんだね。
「早く出せよ。気になるだろう?」
タケルがルイスさんに言う。ルイスさんはため息をつくと背後にいた男たちに品物を出させる。
二台の豪華版カキ氷機がテーブルの上に置かれた。二台とも外観からは全く同じものに見える。
百均のカキ氷機を見て作ってるからか大きさは全く違うが、形は同じになってる。ただ百均のと違って手動ではないからハンドルはない。代わりに魔石が嵌められてる。あれを回すと氷が削られるんだね。
豪華版と言うだけあって宝石のようなものがはめ込まれてキラキラしてる。これははっきり言って必要ないと思う。豪華版って言われたからつけちゃったんだね。
「どうして二台あるんですか? 同じものに見えるんですが......」
「同じじゃないですよ! 全然違うものです。 右の方は魔石を回すとこの宝石のところが青っぽくキラキラと光ります。そして左のほうは回すと赤っぽく光るんです」
どうです。凄いでしょうと胸をはってるルイスさんには悪いけど、いらないよそんな機能。でも二つあるほうが便利だからいいか。
「では早速削ってみてください」
ルイスさんが私に言う。非力な人でも簡単に使えるのかを確かめるには私が使ってみるのが一番わかりやすい。
氷を入れて魔石を右に回す。
『ゴリゴリゴリーーーィ』
大きい音にビクっとなったけど氷があっという間に削られていくのは見応えがある。
無駄に青い光がキラキラと光ってる。
「うむ。これならいいだろう」
タケルが頷くとルイスさんはホッとした顔をした。
「せっかくですからルイスさんも食べてください」
私はカキ氷にイチゴのシロップと練乳をかけて渡した。ルイスさんは商売人らしく紙コップとスプーンストローを眺めてたけど、
「早く食べないと溶けますよ」
と言う私の言葉に慌てて食べだした。
「おおー。これはタケル様に伺ってましたが素晴らしいです! 試作品で氷を削って食べたけど、冷たいだけで売れるのかと思ってましたが、これはヒット商品になりますよ!」
ホクホク顔のルイスさん。苦労が報われたようで良かった。
「商品になる?」
タケルが首を回してる。それを見てルイスさんが汗を垂らしてる。ポケットからハンドタオルを取り出して拭いてる。ここで売ってるタオルだ。そういえばこの間アルヴィンが買って帰ったけどお父さんにあげる為だったんだね。
「あぅ.......、もちろん無料ではないです。こちらのカキ氷機も差し上げます」
「エッ? 貰えるの? 良かったねタケル無料だって!」
あまりに豪華版っぽくて高そうだなと思ってたから無料は助かるよ。
「ただより高いものはないって知らないのか?」
タケルが呆れてるけど、ルイスさんってそんなに悪い人に見えないよ。
「あとは今度オープンするホテルに招待します。他にも便宜はかりますよ」
私の方を見てルイスさんが交渉してくる。この辺はさすがだ。私の方が落としやすいと判断したみたい。でも私だって欲しいものは欲しいって言うよ。
「そうね。この宝石みたいなのはつけなくていいから、これと同じカキ氷機を後二つで手を打ちましょう」
にっこり笑って私が言うとルイスさんもにっこり笑って
「ありがとうございます」
と言った。あれ? 失敗? タケルは呆れてるの? えっ? もっと要求して良かったの?
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