名無しのヒーロー

  「名無しのヒーロー」


道は迷路みたいに何処もかしこも繋がってたけど

僕達が進める道は一つしか無かった

折れ曲がって

窮屈で

身を寄せ合って歩いていても押し潰されそうな狭い道


世間って奴は何処までも退屈で、陰湿で

何もしなくたって責めたてて来る

憂鬱で

行き場の無い

二人繋いだ手が何度も離れそうになった


「本当はワタシ、この国が嫌い」

そう言った君に何て答えれば良かった?

ラブロの前で声を枯らすストリートシンガー達も

うわついた言葉だけを紡ぐばかりで……


僕には世界を変えられないって

気付くのが少し遅すぎたけど

それでも君だけを守るヒーローでいたかった


待ち望んでいた筈の季節は期待外れで

シャツを汗まみれにするだけ

閉ざされて

重すぎる

夏の夜の香林坊は何処にも通じてなかった


「誰も本当に生きてなんていないのよ」

僕はそんな君ともっと話し合えば良かったのかな?

確かに僕は停滞して、いい気になってた

だから罰が下った訳じゃ無いんだろうけど……


もし世界が少し変わっていたら

僕達はもっと自由で

もう少しヒーロー気取りでいられたのにさ


僕達の世界は少しも変わらず

君は翼を折られてしまった

教えてよ、ヒーローって何処に居たんだい?


行き詰った世界を少しでも変えられたらって……

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