白詰草が咲く頃に
姫宮未調
プロローグ 連続殺人姫
第0話 血塗れの麗しき殺戮者
━10年前、少女が誘拐された事件があった━
現在巷では、成人男性ばかりを狙った、連続殺人事件が起きていた。目撃者は語る。
『彼女は血を浴びてもキレイだった』と。
……そう、犯人はうら若き女性。真っ白なワンピースを纏い、所作すべてが繊細で、ターゲットは見とれたら最期だ。刃渡り15センチほどのナイフで、ゆっくりと深くお腹を刺される。彼女の細腕のどこにそんな力があるのか、同じように、ゆっくりと引き抜く。何度も、何度も繰り返す。少なくても三回、多ければ十回でも。そうして、次はゆっくりと心臓に、ズブズブとナイフを埋める。ゆっくり引けば、あまり返り血を浴びることはない。しかし、彼女のフィニッシュは、勢いよく引っこ抜く。……まるで、小さな噴水のごとく、ターゲットの血を浴びる。恍惚の表情で。……だが、それで終わらなかった。本当のフィニッシュ……陰部を服の上から勢いよく片手で、無表情で刺した。刺したまま手を離す。
……誰も知らない、知るはずがない。家族を殺され、誘拐された少女が、連続殺人犯になっているなど、誰が想像出来ようか。
少女は、確かに犯人に育てられ、犯人を父と慕い、楽しく生活していた。しかし、今彼女の側に犯人はいない。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「パパ!行ってきます!」
可愛らしい女の子が制服を纏い、声を掛けたのは、『遺影』。三年前、彼は殺された。その場にいた彼女には、記憶がなかった。きっと、父親が殺されたショックで、記憶障害を起こしているのだろう。警察や、その他諸々の機関で調べた結果も同じものだった。
三年でやっと持ち直し、何とか今日無事に卒業式を迎える。学校の計らいで、自宅学習を組み入れてもらっていた。それがなければ、自主退学していたことだろう。
「おはよう!」
「おはよう!『
「もう!苦しいよ、
式はまだだというのに、紗知は杏里に抱きつき、今にも泣きそうだ。仕方ないことだろう。大好きな友達が父親を殺され、自主退学してしまうかもしれなかった。しかし、何とか持ち直して一緒に卒業出来る。喜ばないわけはない。今日という日を一緒に迎えられる幸せは、二度と来ない。
………そう、二度と来ないのだ。こんな幸せは。今日という晴れの日を境に、杏里は忽然と姿を眩ませた。
━━彼女の中に芽生え、成長したそれは、すべてを知っていたのだから。
運命の歯車は既に動きだし、自ら止めることは出来ない。━━
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