第3話
(それにしても、なんというたわけたものを……)
元はといえば、かの昔、わしの祖先の山ノ内勘太郎……
そうなんじゃ、奇しくもわしと同じ名前の先祖が金脈をみつけ、大もうけをしたことに端を発する。
うなる程の金を手にした勘太郎は、湯水のごとく金を遣い、その挙句に「他の誰も持っていないもの」を欲したのじゃな。
金持ちによく見られる傾向じゃ。
そうして、怪しげなものを探し回るうちに、とある陰陽師と親しくなり、あの壷を手にしたということのようじゃ。
その後、勘太郎はその陰陽師と共に別の世界に行き、それから数年後に戻って来たとあった。
なんでも、その世界は人間と同じくらい、化け物がいる世界だそうだ。
しかし、その化け物達は強暴なわけではなく、人間と化け物は仲良く共存しているのだとか。
勘太郎と一緒に行った陰陽師は、その世界をたいそう気に入り、こっちの世界には戻って来なかったと書かれてあった。
本当にそんな平和な世界なら良いが、この世界が当時からすればこれほど変わっていることを考えれば、あっちの世界だってどれほど変わっているかもしれん。
(慎太郎……大丈夫かのう…?)
確か、勘太郎がこっちに戻って来た時のことについては詳しいことは書いてなかったと思うが、もう一度確かめてみよう。
こっちに戻るヒントのようなものが書かれておるかもしれん。
(……待てよ……)
たとえ、なんらかのヒントがわかったとして……
それをどうやって慎太郎に知らせれば良いんじゃ?
「う~~……」
わしの口から漏れ出て来るのはおかしなうなり声ばかり。
こんなこと、誰にも相談出来ん。
壷のことは、生きてるうちに誰かに伝えるなんてご法度じゃ。
憲太郎が、壷のことを知るのはわしが死んだ後のことじゃ。
どうしたものか……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます