side じいちゃん

第1話




(今度、町に行ったら乾電池をたくさん買っておかねばならんな…)




久し振りに屋根裏の様子を見てみようと思ったら、懐中電灯が付かんかった。

電池切れじゃ。

わしは、早速、近所の岡本さんを訪ねた。

岡本さんという人は、昔から几帳面というか用心深いというか、そういう所がある人で、わしはそのお陰でずいぶんと助かっておる。

もちろん、電池も分けてもらえた。




蔵に入り、わしは懐中電灯を片手に、奥にある急な階段を気を付けながら上って行った。




(あれは…!)




上った途端に、わしの鼓動は速さを増した。

なぜなら、例のあの壷の傍に、見慣れない荷物があったからじゃ。

誰かがここに上がったことは間違いない。

しかし、その人間はここにはいない…それが意味することをわしは瞬時に悟った。




(一体、誰が!?)




懐中電灯の明かりを向けると、そこには若いもんのものらしいショルダーバッグと、そして……




(慎太郎!!)




バッグの横にあったのは、わしの大好物の温泉饅頭。

いつもこれをもってふらりと遊びに来るのは、孫の慎太郎しかおらん!




(……なんということじゃ…)




わしは荷物を持ってそのまますごすごと蔵を出た。







(……困ったことになってしもうた。)




家に戻り、バッグの中身を探ってみると、財布の中には慎太郎の名前の記されたクレジットカードが入っていた。

やはり、このバッグは慎太郎のものに間違いない。

そして、慎太郎は行ってしまったんじゃ…

あの世界へ……




(言い伝えは、やはり嘘ではなかったということじゃな…)




「あぁ~!なんで、蔵の鍵を閉めて行かんかったんじゃ!

わしの馬鹿馬鹿馬鹿!」




ぽかすかと頭を叩いた所でどうにもならん。

うちには滅多に人が来ることはないし、懐中電灯の電池がなくて岡本さんの所に借りに行ったのはせいぜい十分か二十分のこと。

なにもそんな時にたまたま偶然慎太郎が来るなんて、考えるはずもない。

そもそも、世間的にはお盆休みはあさってあたりからじゃないのか?


……と、今更、そんなことを言うても仕方がない。

憲太郎にはまだ本当のことを言うわけにはいかんし、今はとにかく様子をみてそれからは慎太郎が無事だという偽装工作するしかなかろう。



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