第6話

「し、知らんって…そ、そんな……

そ、それじゃあ、俺は……!」


「なんじゃ、なんじゃ…ええ若いもんが、情け無い声を出しおって……」


「と、当然でしょう!

お、俺はわけのわからない世界に飛ばされて、帰る方法もわからないんですよ!」


「方法ならさっき言うたじゃないか。」


「ええ、ええ、それなら聞きましたとも!

でも、あなたは肝心のその壷がどこにあるか知らないんでしょう!」


呑気な老人の顔を見ていると、俺はだんだんと腹が立って来て、自分でも気付かないうちにいらいらした声を出していた。

だって、俺はこんな窮地に立っているというのに、この老人と来たら人の気も知らないで……




「いかにも。

わしはその場所は知らん。

……じゃが、わしの兄弟子なら知っておる。」


「え……?」




……そ、そうなの?

老人のその一言で、俺の眉間から深い皺が消えた。


本当に人の悪い……

そういうことなら、最初からそう言ってくれれば良いものを……




「そ、そうだったんですか?

あ……でも、まさか、その兄弟子さんの居場所がわからないなんてことは……」


「いや、わかっておる。」




ほっとした。

今度こそ、俺はほっとした。

ってことは、その兄弟子とやらに壷のありかを訊きに行けば良いだけなんだ。

そしたら、元の世界に戻れる。




「その兄弟子さんのお宅を教えていただけますか?」


「もちろんじゃ。

ただし、多少遠いぞ。」


「そんなことなら、問題ありません。

教えて下さい。」


「よし、わかった。

では、すぐに準備をするから待っておれ。」


老人はそう言い残し、部屋を出て行った。




準備って……一体……?

……あ、地図でも描いてくれるってことかな?




そんなことを考えながら、しばらく待っていると、老人は特に何も持たずに戻って来た。

地図を描いてくれてたんじゃなかったんだろうか?



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