第2話
「じいちゃん!俺だ!」
声をかけたが、家の中はしんと静まり返っている。
庭にでもいるのかと思ってまわってみると、蔵の扉が開いているのが目についた。
「じいちゃん!」
蔵の前で声をかけたが、そこでも返事はなかった。
子供の頃、この蔵にはおばけが出ると言われてて、俺はそれを信じてここには近寄りもしなかった。
おやじに聞いたら、あの蔵には先祖代々のお宝があるから、子供が近寄いて迂闊に壊したりしないようにそんなことを言ってるんだということだった。
だけど、それは分別の着く大人になってからも変わらず、俺は何度かじいちゃんにお宝を見せてほしいと頼んだが、結局、見せてはもらえなかった。
おやじでさえ蔵には入れてもらえないと言う事だから、ここには相当すごいお宝があるのかもしれない。
そして、今はそれを確認する大きなチャンスだ。
俺は好奇心を押さえきれなくなって、蔵の中に足を踏み入れた。
かびくさいにおいとほこりっぽさに、鼻がむずむずする。
蔵の中にあるのは使わなくなった家具や家電……つまり、どう見てもがらくたばかり。
どこにそんな大切なお宝があるのかと、俺は薄暗い中、目を凝らして見渡したが、どこにもそんなものは見あたらない。
一体、どういうことなんだ?
俺の頭の中には、疑問が広がるばかりで全く意味がわからなかった。
その時だった……
俺は、蔵の最奥にまるではしごのような細くて急な階段をみつけたんだ。
俺は、その階段を上って行く。
上った先は、狭くて暗い屋根裏部屋だ。
ぎしぎしと床の軋む音が、やけに大きく響く。
その部屋には、これと言ってなにもなく……ただ、部屋の片隅にやけに大きな壷があった。
きっと、これがお宝なんだ。
俺には骨董品の目利きなんて出来ないから、特に何がどう良いのか悪いのか、何もわからないけど……
でも、こんな所にまるで隠すみたいに置かれているのは、お宝である証拠に違いない。
俺はバッグを降ろし、壷の傍に座りこんでその壷を間近でしげしげと眺めてみた。
そうっと手を伸ばし触ってもみたが、暗いのもあってやっぱり特になにがどうなのかはさっぱりわからなかった。
だけど、ふとのぞいたその壷の中に、なにかきらっと光る物が見えて……
なんだろうと少し身を乗り出したその時……
「わ,あ、だ、誰かーーーー!」
信じられないようなものすごい力で俺の身体は壷の中に吸い込まれて行った。
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