世界最強の劣等生剣魔士

高橋創将

1年生 春の襲撃編

序章

 ――剣と魔法。


  誰しもが羨む理想の世界。煌めく刃に、自由に思い通りにできる魔法。その2つがある世界はどれだけ素晴らしいことなのだろうか。


  西暦2030年頃より始まった急激な寒冷化により、資源物質がこの世から消えつつあった。その時に起こったのが『第3次世界大戦(WWⅢ)』。傍観している国がない、真の世界大戦。それは約20年で終わった。


 結果、アメリカが北アメリカ大陸と南アメリカ大陸を吸収(アメリカ合衆国)、ロシアと中国は同盟国(RC同盟国)となりアジア(日本以外)を吸収、エジプトがアフリカ大陸の北側を吸収(エジプト連合)、南アフリカ共和国がアフリカ大陸の南側を吸収(南アフリカ連合)、イギリスがヨーロッパ全域を吸収(吸収とはなっているが、同盟を結んだだけである――EU統一連合)、日本はRC同盟国とアメリカ合衆国とEU統一連合と形上の『同盟』を結んでおり、どの国とも敵対はしていなかった。オーストラリアとその他諸国は孤立状態。


  こんな状況が続くこと15年。今まで『超能力』と言われていたものが『魔法』という言葉に変わり、その『魔法』を使える者―『魔法師』―の取り合いにより、『第4次世界大戦(WWⅣ)』勃発。


 アメリカ合衆国とRC同盟国とEU統一連合とエジプト連合との戦い。傍観していた国は、南アフリカ連合と日本とオーストラリアその他諸国。この戦いに日本は参加ができなかった。同盟国同士の争いだからだ。


 日本は手を出さず、じっと見ているだけしかできなかった。結果、それぞれの国で『魔法師』を育成するということで一件落着。経った1年で終えた。


  そこから125年経った西暦2192年。全世界を巻き込んだ『第5次世界大戦(WWⅤ)』が始まった。


 RC同盟国がEU統一連合とエジプト連合と南アフリカ連合と戦争になった。原因は、肩のぶつかり合い。とある橋にて、ロシア人とヨーロッパ人がぶつかった。どちらも謝らず殴り合いの喧嘩。それを止めに来たはずの通りかかった人までもが参戦。警察沙汰になったわけだが、運が悪くロシアとヨーロッパの方が来るのが同時だった。止めに入ったところ、ロシア人警察が誤ってヨーロッパ人を刺殺してしまった。その瞬間、全員の脳裏に「もう迷うことは無い」と浮かび、殺し合いが始まった。それがだんだんと大きくなり、ついには世界大戦へ。


 結果は、アメリカ合衆国と日本の協力により一時冷戦状態に。

  この冷戦状態にする為の裏には、ある者達が動いていた。


 ――《剣魔士けんまし》――


 そう呼ばれた彼ら。

  剣と魔法の両方を操る特殊能力を持った人間達。その者達の協力により、この『第5次世界大戦』は冷戦状態となっている。


  この《剣魔士》が生まれたのは日本。核兵器を『剣』で断ち切ったのがきっかけだ。魔法をも使って。


  日本は《剣魔士》を国家指定重要戦闘員として『剣魔士部隊』という特殊部隊を作った。目的は「戦争をやめさせること」。その為ならば人を殺そうが何しようが構わない。それが彼らの目的だ。

  その協力により、『第5次世界大戦』は冷戦状態に、そして冷戦状態から2年でこの戦いは終わった。

  この功績により《剣魔士》の地位は格段と上がった。

 

  だが、それから研究を進めていくうちに、誰でも剣と魔法を操ることができると判明した。すなわち、《剣魔士》は特別な力ではなく『人間』が所有するスキルというわけだ。だが、それでも優劣というものは存在する。


  優等生と劣等生。


  この区別をつける為にそれぞれ違う学校を作った。

  《優等生剣魔士育成機関学校》――《劣等生剣魔士育成機関学校》

  それぞれ優等生と劣等生という言葉がついている。これは差別ではなく区別である、国はそう言い張っている。


  学校名は1つだが、それぞれ《優等生剣魔士育成機関学校第1課(略称、剣魔士学校第1課)》第2課など『課』で分けられている。だが、《劣等生剣魔士育成機関学校》は第1部、第2部など『部』で分けられている。その他の違いもいろいろとある。制服だったり、教え方だったり。


  この学校は西暦2000年頃で言う『高等学校』になる。つまり『高校生』。高校のうちでもう、優等生と劣等生というものに分けられてしまう。


 ――だが、それは表上の事だけであり、別に優等生が劣等生剣魔士学校に入ろうが構わない。


 ――逆に言えば、劣等生が優等生剣魔士学校に入ろうが構わないことなのである。

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