Answer03

■結果説明■


 身もふたもないことを言ってしまいますと。

 こんな質問程度で構成力の有無が判断できたら世話ありません。

 一見ムチャクチャに見えるけど、最後まで読んだらちゃんと法則や作家の意図が理解できる、変わった構成の作品も世に存在します。


 ただ、プロが意図して作ったムチャクチャな構成と、素人がなにも考えずに作ったムチャクチャな構成は、全く違うものです。

 後者の場合はある程度の傾向を感じますので、それを元に設問を組み立てています。



 【《問01》結末を考えて作っている・作った】【《問02》プロットを作成して作品を作っている・作った】【《問03》起承転結、序破急、三幕構成などといった言葉の意味を説明できる】は、作家個人個人のやり方や作風に深く絡むので、あまり意味のある質問ではありません。

 結末を先に考える、プロットの作成、起承転結あたりは、HowTo本などでは絶対に書かれている小説の作り方です。

 でもプロットを作らずに傑作を書ける人もいますし、起承転結の四段構成でなくても、五段や六段構成だって存在しますし、日常系と呼ばれる作品内容ではあまり結末は重視されません。

 HowTo本にそう書かれるのも、『やり方が合うか合わないか判断するためにも、とりあえず体験しとけ』くらいの意味だと思ったほうがいいですし。

 なのでこの問いは、確認以上の意味がありません。



 【《問04》作品内の時間で一日の間に、主人公は異なる場所に三ヶ所以上おもむき、詳細に描写している場面はない】も意味がないと言えます。

 作品時間はたった一日でも、立て続けに様々なことが起こる一〇万文字以上の作品なら、自然と三ヶ所以上の場所におもむくことになります。


 ただ、素人くさい作品ですと、文字数が少ないのに、移動・場面転換を頻繁にする傾向があります。

 たとえばファンタジー作品で、冒険の準備をするのに、宿屋から出て冒険者ギルドに行って依頼を受注して、武器屋に行って新しい武器を買って、道具屋に行って消耗品を買い揃えて……というように、いちいち行き先を描写して、店員と会話させる。

 このパターンは、構成能力がないと言えます。

 大抵は『準備して出発した』で、すっ飛ばせます。

 新しく剣を新調したから、武器屋での会話が必要? 

 どうでもいいです。新しい武器への期待感や、なかなかの値段だったことを、歩きながら他キャラとの会話で触れれば済む話です。三〇〇〇文字が一○〇文字くらいに削減できます。

 後に主人公が使ってピンチを切り抜ける強い武器が飾られているから、店での会話が必要?

 はい。今度は必要です。伏線というか前振りなので、省いてはいけません。

 実際ロールプレイングゲームをやっていて、ただ店で売買するだけのことを『イベント』と呼びますか? イベントというのは条件が揃うと、強制的に発生するのものではありませんか?

 不要な情報は省略。必要な情報を面白く盛り込む。それが小説の大前提です。構成能力がないとそれができずに、ダラダラした文章になります。



 その流れを汲んでの【《問05》物語のラストに繋がる伏線・布石が存在する】です。

 説明する前に、『伏線』『布石』を定義しないとなりません

 後の展開に繋がる事象を、さりげなく披露すること。自分はこれを『伏線』と定義しています。

 『さりげなく』がポイントです。登場時には後の展開に関わると理解できないのです。後に関連する内容が出てきてから『あれは伏線だったのか』と理解できるものです。

 思わせぶりに『ヤツが来る……』なんてセリフを出し、後に『ヤツ』が登場するのは、伏線とは認られめません。それは前振り、贔屓ひいき目に見ても布石と呼ぶものです。

 そして『布石』は、『さりげなく』ではないパターン。一見無関係だけど、後の展開に関わりそうな予感はある内容です。よくあるパターンだと、初期に登場したプレゼントや形見の品が、クライマックスで主人公を救うとか。


 伏線・布石はある程度は構成能力がないと使えません。

 ですが、単純に『伏線を使ってる?』と質問すると、誤解する可能性が高いのです。上記の『ヤツ』のような例だと、ただ思わせぶりなことを書いておけばいいだけなので、構成能力がない作者さんでもできます。それを『伏線使ってる』と公言されるのは、自分としては許容しがたいです。

 だから結末部分と質問しました。

 『伏線』『布石』ではなく『前振り』だと、後の展開は直後に出てきます。

 『布石』にしようと時間を挟んでいる場合、今度は思わせぶりなことを言っただけで作者さんが忘れてしまうか、エタって正体不明で終わるパターンが多いです。

 YES――完結させて、なおかつ布石・伏線が使っている作品なら、作者さんは執筆中に全体を見渡しながら作品を作った。つまり、それなりの構成力があるといえます。



 違うように感じられるかもしれませんが、【《問06》回想が少ない、あるいは、ない】【《問07》挿入話、外伝、○○SIDEは少ない、あるいは、ない】も同じ流れによる質問です。

 原則として、小説はページをめくるたび、読み進めるごとに、過去から未来へ作品内時間が流れています。当たり前ですが。

 そして回想は、それを無視して時間をさかのぼる行為です。現実には不可能なタイムトラベルを行っています。

 回想を使うなという話ではありません。使ったほうが面白くなるなら、使うべきです。

 しかし不自然であることに変わりありません。タイムトラベルに巻き込むのですから、読者さんは程度の差はあれ、引っかかりを覚えます。

 だから使わなくても問題ないなら、使うべきではありません。


 挿入話、外伝、幕間、○○SIDEといった、本編ストーリーテラーとは別視点の短編サブストーリーについても、読者さんに与える影響は同じです。

 メインストーリーでの内容を、主人公と話す相手側の視点に立ったり、第三者の立場で見たり、そういった内容もタイムトラベルする上に、転生してますから。いきなり語り手じぶんが別人になれば、誰だって戸惑うでしょう。


 もしも作中で頻繁にそれらの内容がある場合、作家さんの自己満足でしかない内容がほとんどです。

 回想は、後の展開をもったいつけるため。

 挿入話は完全な脇道です。

 どちらにせよ、その間メインストーリーの進行は停止します。

 読者さんが迎合するかはその時々ですが、構成力の観点から見れば、無駄な文章です。

 想像してみてください。東京から大阪に行くために、新幹線に乗ります。

 しかし名古屋で途中下車し、新横浜まで戻り、在来線に乗り換えて名古屋に行き、再び新幹線に乗車しました。

 こんな移動、しますか? こんな移動する人に付き合えますか?

 回想や挿入話を入れるのは、こういうことです。

 無駄を許容できるほどの効果があるなら、話は別です。行うべきですし、上手い証拠にもなります。

 しかし無駄を垂れ流すだけなら、その作者さんは構成能力がないと見るしかありません。



 【《問08》2文以上で改行していることが多い】【《問09》次の段落までの文章が、30文字以上100文字以内に収まっている】については、もっと小さいスケールの、構文能力からの判断です。

 ふたつの質問は、単体では意味がありません。

 広告やWebコンテンツが対象となる場合がほとんどですが、『Zの法則』『Fの法則』というものがあります。画面を見た時、文字の配置によって、どういう風に目を動かすかという理論です。

 Web小説の場合だと、紙媒体と同じ書き方をしている作者さんは『Zの法則』に近い書き方――自動改行される長さで《問08》がYESになりやすく、掲示板などのWeb媒体と同じ書き方をしている人は『Fの法則』に近い書き方――余白が目立つ《問08》がNOになりやすいのです。

 ここまでは単なるクセでしかありません。

 しかし《問09》がNOの場合は、構文能力の問題となる場合があります。


 ここで必要な前置きをします。

 諸説あるので正確とは言いがたいですが、一般的に文の適切な長さ(冒頭から句点まで)は、30文字程度だと言われています。

 出版社や本のサイズで差がありますが、書籍小説で考えた場合、100文字は2行少々です。

 小説に限らず、文章は1文1行とは限りません。1文が冒頭から句点(。)までだとするなら、句点が2回以上使われる、けれども改行していない文章もよく出ます。

 まとめると以下のように。


 (『二重カギカッコ内の、冒頭から句点までを文・センテンスなど呼びます。』そして丸カッコでくくられた、改行するまでの全体を文章・段落・パラグラフなど呼びます。)


 それらを踏まえて説明を続けます。実際に試し書きをしてみれば、より一層ご理解頂けるかと思います。


 《問08》がYESで、《問09》が30文字以下の場合。

 2文以上で、30文字以下の文章。

 断定調の素っ気ない文章が多いと思われます。

 連結できるのに分離させていると予想しますので、作者さんの意図した演出でない限り、構文能力に問題がある可能性が高いです。

 同時に語彙ごい不足も自覚する必要があるかもしれません。


 《問08》がYESで、《問09》が100文字以下の場合。

 書籍、それもライトノベルではなく一般レーベル寄りな書き方です。

 文字を詰め込んだ見た目になるため、好ましいとは言えませんが、誰が書いても充分起こりうる範囲です。


 《問08》がNOで、《問09》が30文字以下の場合。

 Webコンテンツでの一般的な書き方です。

 小説として見た場合は余白が多くなるため、読者さんの是非は分かれるでしょうが、完全拒絶されることではないでしょう。


 《問08》がNOで、《問09》が100文字以上の場合。

 1文で100文字以上の文章。

 メリハリのない書き方をしていると思われます。同じ言葉が重複している悪文である疑いもあります。

 構文能力に問題があり、読みやすい文章を作れない可能性があります。


 あくまで文章単位の構文能力から、作品全体となる構成能力が見えるか、という意見も出てきそうですから、補足しておきます。

 文書はできているけど、小説の構成は下手、というパターンはありえます。コピーライターや詩人など、短い文章を作る人は、全然不思議ありません。

 しかし構文ができないけど、小説の構成が上手いというパターンは、ありえません。『文章が下手だけどアイディアが面白い作品』と混同しがちですが、違います。

 要するに基礎がなってないのです。

 基礎を飛び超える天才がいる、という反論があるかもしれませんが、小説において、そんな天才は存在しないと思っていいです。自分の経験則で、実測データがあるわけではありませんが。

 日本語を話せない国語教師がいると思えますか?



■改善■


 無理に改善する必要もないのでは?

 だって一朝一夕でどうにかなる問題ではありませんから。長い時間をかけて取り組まないと、身につくどころか意識することも忘れます。

 あと、いつもどおりの理由で、作者さんご当人がどうしたいかの問題です。


 一言付け加えると、『面白ければそれでいい』という考えは捨てるべき、ということでしょうか?

 誰がどう考えたって、作家に構成力があるに越したことはないのですから。


 構成に関わらず、面白い作品を評価する人。

 面白い上に、構成が上手い作品を評価する人。


 二種類の意見の持ち主がいる時、『構成力がないけど面白い作品』と『構成が上手く面白い作品』のどちらが評価されるでしょう?

 もちろん後者です。双方の意見から評価されるのですから。

 『面白ければそれでいい』で『構成力がないけど面白い作品』を作っていたら、評価は伸びません。

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