詳細レビュー02

ダタッツ剣風~悪の勇者と奴隷の姫騎士~

(※ネタバレも含みますのでご注意下さい)


・作品名

『ダタッツ剣風~悪の勇者と奴隷の姫騎士~』

・作者名

オリーブドラブ

・キャッチコピー

「資格がなくても、君を守る。」

・あらすじ

 かつて、人類の希望という存在でありながら、戦争の兵器として人類に牙を剥いた勇者がいた。帝国勇者と呼ばれたその男は、やがて戦火の渦中に姿を消した。

 それから六年。帝国の属国となった王国では、駐屯兵による横暴が繰り返されていた。彼らを食い止めるために奮闘する姫騎士ダイアンはある日、ダタッツと名乗る青年と出会う。

 だが、彼の実態はかつて最強と恐れられた「帝国勇者」だった!


 帝国の悪徳貴族を必殺の剣技で打ち倒し、褒美も求めず立ち去ろうとするダタッツ。その背を追うダイアンは、恋心と怒りを胸に、ダタッツを王国騎士へと取り立てた。


 彼への執着は果たして――恋なのか。憎しみなのか。




(総評)

詳細レビューも2回目です。また万人受けというより、個人的に大好きなものをチョイスしました。

……良いじゃん別に!それに皆に受けるものは既に評価されてるし!あと詳細にレビューしようとすると、どうしても多分なネタバレを含んじゃうし!『うさぎ強盗には死んでもらう』とか『若宮探偵事務所』とか、ネタバレせずに魅力を伝えるのは不可能に近いです。


イキナリ脱線してしまって申し訳ありません。今回は主人公最強系ハーレム異世界転生作品、『ダタッツ剣風』とその後日談を描いた『ダタッツ剣風~中年戦士と奴隷の女勇者~』も合わせてご紹介致します。

「えー……まーたテンプレ異世界モノかよ」と思ったそこのアナタ、ちょっと待って。むしろ異世界モノに飽き飽きしている方にこそ読んで欲しい一作です。


世界全土に多大な影響を与える『帝国』に、『勇者』として伊達だて竜正たつまさは召喚されます。帝国は長きに渡る『王国』との戦争に終止符を打つため、かつて魔王を滅ぼした伝説の勇者、その力を宿す者として竜正を祭り上げるのです。

そして竜正は辛い鍛錬を重ね、『勇者の剣』も手にし、その圧倒的な力で帝国を勝利に導きました。

……と、言うのが大まかな前日譚。


この作品の魅力はかつての『帝国勇者』として名を馳せた竜正の苦悩と、『ダタッツ』と名を変えてそれでも大切な人々のために戦う姿勢にあります。

最強の力を持つが故に、一種の『戦略兵器』として扱われる少年の悲運。敵からは恐れられ、助けたはずの人々からも畏怖される。第2章はダタッツの過去エピソードがメインなのですが、思わず『救いはないんですか!?』と言いたくなる内容でした。


決して「俺つえーわー。普段は最弱とか言われてるけど実はメッチャつえーわー」みたいなノリではないです。いや、異世界最強モノを批判したいわけじゃなくてね。むしろそういうの好きだし私は。

ただ今作は、かなりハードでシリアスな異世界最強系だと思って下さい。


それと個人的に、キャラの中で王国の英雄アイラックス将軍が好きです。作中では既に故人ですが(ホントに既に死んでるキャラ好きだなコイツ……)、敵であったダタッツの心の闇を見抜き、死後も帝国・王国双方に影響を与えるキャラです。彼の存在があったからこそ、ダタッツはより深く絶望し、そして再起へのきっかけの一つにもなったのだと思います。


作品の難点を上げるなら、やはり冒頭でしょうか。アイラックス将軍も含め、後の重要キャラしか出ていないのですが、初見の方には『?』と思われるかもしれません。その後の第1章からは一気に面白くなるんですけどね。


そういった部分もありますが。重厚なファンタジー、一風変わった異世界モノを求める方には是非オススメしたい一作です。読み終わった後は、一本のファンタジー映画を観終わったような感慨でした。


後日談を描いた作品もオススメです。むしろ、作品の雰囲気を掴むには先に後日談から見た方が分かりやすいのかもしれない。一応独立したお話ですし、長くもないので。そこで気に入ったのであれば、きっと本編も気に入ると思います。


『大いなる力には、大いなる責任が伴う』。この言葉を再認識するような作品でした。最強であること=何もかも幸福である、というわけじゃない。ヒーロー像を描く際に気を付けなければいけないことだな、と作家としても教訓になりました。




これこそ本当のテンプレですが『※あくまで個人の感想です。アナタにとっての面白さを保証するものではないので、あしからず』。

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