第4話
俺は本当に旅をすることになってしまった。どこに行ったらいいのかわからない。浮浪者のように町をさまよい、町から追い出され、森の中を一人で歩いた。
「はあ、失敗した」
俺はため息をついていた。
俺は勇者のはずなのに、なんとかうまくいかないのか。
そのまま、飢え死にしそうになって、半月ほど何も食べずにさまよった。
そろそろ死ぬのかなあ、と俺は思った。
そしたら、運がよく通りかかったやつがいた。女だ。
「旅の方、お困りではありませんか」
女がいった。
「ああ、困っている。俺は勇者なのだ」
ととりあえず、勇者であることを示し、優位に立とうとした。それが功を奏したのか、女は親切に水と食料と薬草をくれた。
そして、地図を俺にくれた。
「この目印が書いてあるのは何だ?」
と俺が聞くと、
「これは魔王城です」
と女が答えた。
「おまえ、俺と一緒に旅をしないか」
と俺が誘うと、
「いえ、わたしは勇者を秘かに監視している者。いえ、わたしはただの通行人です。旅のお供は別の方に頼んでください」
「だが、俺は勇者なんだ。魔王を退治する勇者だ。勇者の仲間になればきっと美味しいことがあるぞ」
「いえ、あなたは勇者をそういうものだと考えているからダメなのです。いえ、そうではなく、わたしはただの通行人なので、これで失礼します」
そして、女と別れた。女はいってしまった。
思えば、かなりの美少女だったなあ。ああ、なんで一緒に旅してくれないのかなあ。力づくで犯せばよかったんだろうか。
などと考えて。俺はもらった地図を頼りに魔王城まで行った。
魔王城につくと、俺はいった。
「魔王さまにお伝えしろ。伝説の勇者が魔王さまに降伏しにきたと」
魔物の方が驚いていた。
勇者が魔王さまに降伏するというので、魔物たちも大騒ぎになり、魔王のところに通された。賓客扱いであった。
だから、他の勇者はアホなのである。俺のようにすればよいのだ。俺が賢い勇者というものなのだ。
魔王はいった。
「勇者よ、降伏するそうだな」
俺は勇気をもって答えた。
「そうだ。魔王よ、俺は降伏する。ただし、ただで降伏するわけにはいかない。俺と一緒に地上を統治しないか」
魔王は大爆笑していた。
「よかろう。この魔王、勇者とともに地上を支配しよう」
こうして、俺は魔王と手を組んだ。見ろ。他の勇者がアホなのだ。俺が賢い勇者なのだ。
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