わんこ系女子との同棲生活

0013

プロローグ



 とあるマンションの一室。

「ただいま」

 と、学校から帰ってきて玄関の扉を開けた。

 靴を脱いで廊下へと上がる。

 すると、僕へと向かって猛スピードで近づいてくる影があった。

「おかえりー!」

 声の主が急接近する一瞬、目に映ったのは。

 ライトブラウンで、セミロング、緩いウェーブのかかった髪を揺らして。

 喜色満面の笑みを浮かべて、駆けてきた彼女の姿だった。

 彼女は、その速度を殺すことなく、僕の胸に飛び込んできた。

 結果、受け止めきれずにお尻から床に倒れて、彼女、支倉はせくら結衣子ゆいこと床との間にサンドイッチにされてしまった。

「いつつ……」

「だ、大丈夫?」

「心配してくれるなら、もうちょっと加減を考えてほしいな」

「ごめんなさい。だって、セイくん帰ってきたの嬉しくって、つい……」

 結衣子はしゅんと、眉根を下げた。

 ちなみにセイくん、とは僕のことで、久野木くのき誠太せいたというのが本名だ。

「まあ、反省してくれているなら全然問題無いよ」

「本当!? 良かったぁ」

 と、今度は心底ほっとした表情になる。

 その顔を見るだけで大抵のことは許してしまいたくなる。

 それに、まあ、なんといいますか。

 悪いことばかりでもなかったわけで。

 それが何かと端的に言ってしまえば、結衣子の胸が僕の体に押し付けられているのであった。

 手のひらに収まらないほどの大きさの、幸せな質量を感じてしまっては、男であるなら誰しも喜ばずにいられないだろう。

 結衣子が上から退くまではその感触に浸っていよう。

 そう思っていたのだけど、なかなか結衣子は動く気配を見せない。

 どうしたんだろうと結衣子の顔をみると、なんだかだんだん赤くなっているようだった。

 いつもは大きな黒目でまっすぐ僕の顔を見て話すのに、今は視線が合わない。

「結衣子、どうしたの?」

「え、あっ、いや、その……」

 と珍しく口篭る。

「あ、あ、当たってる、から」

「……?」

「お、おち、……、下の方が」

「あっ……」

 言われて始めて下腹部が勃っていたのを自覚した。

 無性に気恥ずかしくなる。

「ご、ごめーー」

 謝ろうとする言葉を結衣子が遮る。

「セイくんは、その、……………………したい?」

 結衣子の発言に、思わず唾を飲む。

 そんなつもりじゃなかったんだ、と理性は否定するよう考える。

 でも、その潤んだ瞳が。

 艶めく唇が。

 柔らかな肌が。

 結衣子の全てが、欲しくてたまらなかった。

「…………うん」

 僕は静かに頷いた。

「そっか」

 と結衣子は、はにかむように笑った。

 普段は年上らしさなんて欠片もないのに、その表情はなんだかとても大人っぽく見えた。

 結衣子は僕を押し倒した姿勢のまま、顔を僕の顔に近づける。

 そのまま、寄り添うように唇を重ね合わせた。

 真っ暗な静寂の中に、ただ結衣子だけを感じる。

 永遠にも一瞬にも近い時間ののち、名残惜しげに離れる。

「……はぁ」

 結衣子の口から切なげな吐息が零れる。

 それによって、もうトップに入っていたと思っていたギアが、またさらに上がる。

 少し反動をつけると、結衣子ごと体を横にごろりと転がす。そして、今度は僕が上になるように体勢を変えた。

「きゃ……!?」

 ちょっと驚いたみたいに、結衣子が声を上げた。

 それに構わず僕は結衣子を組み敷く。

 そしてまた、噛み付くような勢いで口づけを交わした。

 さっきよりも激しく、唇全体を味わうみたいにこちらの唇を這わせる。

 しばらく味わって、そのままもっと求めるように、半ば強引に、結衣子の口内に舌を滑り込ませる。

「ん、あ!?」

 結衣子のくぐもった嬌声が漏れる。

 耳から興奮剤を投与されて、脳が思考を放棄しだす。

 本能のまま、結衣子をむしゃぶり尽くす。

 始めはされるがままだった結衣子だが、次第に舌を絡ませ返してくる。

 意識が朦朧としてきて、ただ気持ちよさに体を委ねる。

 二人の境界が曖昧になって溶け合っていくような錯覚。

 お互い、呼吸が荒くなってきていて、それを感じて相乗的に二人を昂らせてていく。

 舌でのじゃれあいを続けながら、僕は結衣子の体を触り始める。

 髪をなでて、顔の輪郭をなぞり、首を伝って、鎖骨に落ちる。

 そのまま手は体の下へ向かっていって、衣服の下部から侵入し、今度は這い上がり、結衣子のふくよかな胸へと行き着く。

 最初はブラの上から揉み上げていたけれど、すぐにじれったくなって、結衣子に腰を上げさせて背中のホックを外すと、直にその柔肌に触れた。

 周囲を揉みしだきながら、頂部を刺激すると、

「……っ、やっ!?」

 と結衣子の体が、びくんと跳ねる。

 それに気を良くして、さらに胸の先っぽを重点的に責め続けていく。

 結衣子は悶えるように身をよじらせながら、喘ぐような息をする。

 とどまることを知らない熱情は、より激しい快楽を求める。

 長いキスを終えて、一度愛撫を止めると、また手を下へと遣る。

 腰を撫でるように過ぎていき、脚を滑らせていってスカートの端を摘むと、それをたくし上げた。

 かぶりつきたくなるような太股ふとももと共に、シンプルだけど可愛いデザインの下着が露わになる。

 そしてその下着には染みができていて、見てわかるほどにぐっしょりと濡れていた。

 湿地に手をあてがい、擦るように触る。

「あん、いやっ……!?」

 それだけで、結衣子は脚を内股に閉じるようにらせた。

 しかし、本気で嫌がっていたわけではなく、少しずつ受け入れるように脚を開いていく。

 そのまましばらく撫でていると、結衣子の手が僕のいきり立ったモノをズボンの上から撫でつけてきた。

 気持ちの良さによって、興奮がエスカレートしていく。

 擦り続けながら下着をずらしていって、いつしかへ生で触れる。

 入口をなぞるだけで指がヌメった。

 準備が出来ているであろうそこに、中指の先をれる。

「……っ!?」

 中は水気で満たされていて、指は潤滑に奥へと進んでいく。

「っ、ぁ、あ、あ……!!」

 耐えられなかったかのように、結衣子の喘ぐ声が漏れる。

 指が奥に進むにつれ、壁面が咥えこむみたいに圧迫してくる。

 最奥に到達すると、結衣子は僕の体にぎゅっとしがみついてくる。

 しばしの間動かずにいて、慣れてきた頃を見計らって、慎重にゆっくりと抜き差しを繰り返す。

 結衣子は時折身を震わせながらも、手を伸ばして、ズボン、下着を潜って、僕のモノを直接、軽く握った。

 そして、上下に擦りける。

 僕と結衣子の動きが、まるで行為を行っているかのように同期していく。

 それは次第に強く、激しくなっていき、性的興奮を著しく高めていく。

 危うく達してしまいそうなすんでの所で、押しとどめて、僕は結衣子に告げた。

「はあ、はあ。……ベッドに、行こうか」

「……うん」

 熱に浮かされたような調子で、結衣子は答えた。

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