登校と占い

朝の街。人々がせわしなく歩き回る。

朝の趣なんてあったもんじゃない。

電車は満員超。駅の構内ももちろん人であふれている。いつも通りの風景。

学校までの道のりも、コンクリートに囲まれて窮屈だ。

鉄橋を渡っていても、ビルの隙間からの景色に感動なんてしないし、見える景色は灰色の堅い地面からはえる灰色のビルや、下をせわしなく通る色々な色の車。歩いている人と目があって一目惚れなんてことはありもしない。

マンガやドラマに出てくる爽快な朝なんてこんな場所では味わえないんだ。

なんて味気ないんだろう。このままでいいのかな?なんていつも考えている。でも自分からは何かをしようなんて言う気はさらさらない。僕はいつでも誰かが、何かが世界を変えてくれるのを待っている。

自分で変えるなんて言う勇気はないから。

とか、そんなことを考えながら歩いていれば後ろから声がかかる。


「おーい! いっちゃーん! おはよーっ‼ 」


 声に振り返ると彼女は目の前まで走ってきた。息が乱れている。


「ああ、おはよう。篠塚」


「うん! おはよ! 」


 朝からこんな大声を出して僕を呼ぶのは彼女くらいだろう。

彼女、篠塚は高校1年のときに隣の席になってからなんだかんだ仲良くしている。今の僕の最大の友達といってもいいだろう。


「もー、いっちゃんまた今日も朝からつまんなそうな顔してるー。いつも言ってるじゃん! 朝は元気に楽しそうにっ! てさ~」


「僕だっていつも言ってるだろ、朝は苦手だからテンション高くするとか無理だって」


「ぶぅぅ、いっちゃんのいけず」


 いつも通りの会話。お互いに少しふざけながらの普通の会話。

これは結構好きだ。


「あ。そうだ、いっちゃん今日の占い見た? 」


篠塚がそんなことを聞いてくる


「いや、みてないけど。なに? 良かったの、結果? 」


「ふっふーん。そのとおり! なんとなんと今日の私が1位だったのでーす! 」


「それはオメデトウ。イイコトアルトイイネ。」


「何でかたことなのさー! 友達が1位だったんだよ?もっと喜ぼうよー!」


「占いで1位とったくらいでそんな喜んでもバカみたいだろ。しかもニュースの占いだし」


「なんだって1位は1位なんですーだ! べーっだ。」


はぁ。ニュースの占いなんて大体があてにならないのに何でこんなに喜べるんだよ。やっぱり篠塚はどっか抜けてる。


「ついでにいっちゃんのも見といてあげたのにそんなこと言うんだったら教えてあげないよ」


「別にいいよ占いなんて。信じてないし」


占いはきらいなんだ。


「いっちゃんはねー」


「いや、話聞いてよ。というか、教えないんじゃなかったの」


「せっかく見てきたのにもったいないじゃん。わがままいわないの!」


「わがままって……」


「じゃあ言うからねー。今日のいっちゃんの順位は~、ドルドルドル」


「それ口で言うんだ」


そして、篠塚の口から順位が発表される。


「ドルドルドルドルルルルルッ!

ジャン!『12位』です!! 」


「……」


なんだそれ。


「あれ? 反応ないな? 生きてる? ショック死? 」


「ああ、確かにショックは受けてる。最下位の知らせをそんなにためにためたて言い放ったことにショックが隠せないよ」


「ええ~、そのわりには反応うすいよ~」


「所詮ニュースの占いにそこまで驚かないよ」


「ぶぅぅ」


篠塚の表情がまた変わる。コロコロと。

本当に見ていて飽きない。


「で?その内容は?」


「えっと、たしか『今年最大の不幸が貴方の身に訪れるかも!』だったよ。うん」


胡散臭すぎやしないかなそれは。

まだ今年が始まってからそんなにたっていないとに最大の不幸が来るとか宣言されるなんてそれだけで不幸だよ……


「ちなみにちなみに、ラッキーアイテムは『美少女』だって!」


それアイテムじゃないんじゃ。


「ねえ、何でこっちにウインクしながらくねくねしてるの? 私は美少女だって言いたいの? 自分大好きな子だったつけ? 」


「いっちゃんのバカー! 」


篠崎が走り出す。


「ちょ、まって! て、はやすぎだって! 」


それを追いかける。

話しすぎたせいかもうすぐ授業が始まる時間だ。

急ごう。

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