ふける夜

「いけないわ」

背中を向けて君は言う


かわいそうに

君は可愛い僕のいもうと


僕の夜に耽る度

その軽そうな頭の中で

家族の顔が行ったり来たり



それは合図

「いつまでも3人でいたいわ」

いい子の顔で君が言った



君たちと耽る僕の夜

4人掛けの食卓で向かい合い

君はひとくち家族を啜る


「美味しいわ、お義兄さん」

君が笑う

「はじめての味よ。なんのスープかしら」

君の笑顔は久しぶり


「お姉さんだよ。きみの」

僕は笑う

「これで片時も離れず、3人でいられる」

怯えた顔がうりふたつ



今夜もまた更けていく

背中に食い込む爪までよく似た君たちの夜



4人掛けの食卓に僕ひとり

ふたつの皿を並べて耽る待望の夜

僕はひとくち家族を啜る



「なんてことだ」

裏切りが甘美だなんて嘘っぱち

「なんてことだ」

積み上げた僕の夜が老けていく



時間も手間も惜しまずに

うりふたつを選び出したのに


罪の味など嘘っぱち


穢れた肉で台無しにして

どうしてくれる

狂れていく僕の夜

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