(3)



 *


「さあ、龍之介。みんなの前で言ってごらん? 私がお前に何をした?」


 そうだ、そうだよ。

 龍之介さんの口から語られればそれが本当のことなのだ。

 私はじっと龍之介さんを見つめた。

 文さんも見つめた。

 姫香の瞳からだけ殺気が混じっている。


「……本当のこと、言いますよ」

「ああ、言うが良い。言えるものなら」


 龍之介さんはカッと頬を染めると、一瞬ためらった様子を見せたが、しかし心を決めたように一度、「うん」と頷き語り始めた。


「当時流行ったラブコメ漫画の物まねさせましたよね。俺様キャラ、ヤンデレキャラ、貴族キャラ、ツンデレキャラ……。しかもそれ相応のコスプレをさせて! 白衣やスーツ、貧相そうなボロボロの服に、年が合わないというのに私立の小学生が着るような短パンの制服まで!」


 ……え。

 私は言葉を失った。

 確かにそれは、顔を赤らめるほどの「あんなことこんなこと」だと思う。

 が。


「えっと、龍之介?」


 文さんはすまなそうに小さく手を上げる。


「猫神様とその……身体を重ねたことは?」

「はい? そんな恐れ多いこと、したくてもできません。襲われない限り」


 その言葉に傍観者三人は納得したように頷く。

 そして当の猫神様といえば――。


「くくくっ。おもしろかったよね、コスプレして甘いセリフを吐くってやつ。楽しかったなあ……またやろっか」


 なんて言っている。

 っていうか、ずるい。私も参加したい。


「そりゃ、猫神様の頼みなら考えますが、今日はイヤです!」


 龍之介さんはぷいっと顔を背けてしまった。

 彼は散々辱められたことに相当へそを曲げたようで、幼い子供顔負けのすね方をしている。


 それにしても猫神様。

 お主、やるな。

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