(3)


 *


 翌朝。

 それはそれは気持ちのいい快晴だった。

 雲ひとつないとはこのことを言うのだな、と空を見上げながら私は頷く。


「めぐみー? 起きてるかー?」

「起きたよー」


 階下から蘭丸の声が聞こえる。


「朝ごはんが出来た。降りてきてくれないか」

「分かった!」


 私は普段着でも勝負服でもなく、一番自分らしさを彩れる服を選んで着替えた。

 そしていつもより丁寧に髪をとかしてから階段を降りる。


「おはよう」

「うむ。今日はやる気が漲っているな。私も感化されそうだ」

「されていいんだよ?」

「そうか」


 私たちは朝から満面の笑顔を向け合った。


 *


 しっかりお腹を満たして私は蘭丸にお礼を告げてから家を出た。


 だって、誰よりも味方になってくれたのは蘭丸だったから。

 けれど、それはきっと同居人とか、そういう家族に近しい間柄だからの行動だったのだと思う。


 そうでなければ、昨日押し倒したのに私を襲わなかった理由にはならないから。


「…………よし」


 そして家を出て十秒。

 私は隣の家の扉の前に立った。


 息を吸って呼び鈴をならそうと手を伸ばした――ら。


「あら?」

「ほえ?」


 見知らぬ方が立っていた。

 男性とも女性とも言えない人。

 いや、人なのかも分からない。

 それほど神々しい方だった。


 そう言えばこの家はただの妖かしの住処ではない。


 猫神邸、である。


 ……え、まさかの?

 今頃になっての?


「猫神さま登場?」

「はあ、そうですが」


 それはびっくりするほど――。

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