ブラジャー男に愛の手ほどきを

藤和工場

第1話 プロローグ

「あぁ……おっぱいがもみたい」

 俺は、日々常々考える事を声に出していた。高校帰りの自転車の上で歌うように宣言するのは、なぁに、気持ちのいいもんだ。

 ただ、俺の真似をする人は、気をつけて欲しい。自転車に限らずバイクも同じ。安物の車だって――車外に歌やらなにゃらはダダ漏れだ。

 俺はいい、こうして日々願うこと、口にすることで、夢は叶うと信じているからだ。

「おっぱい、おっぱい、でっかいおっぱいがいい、でっかいのだ、俺の手からこぼれてしまうほどのっ、最低Fカップ、そしてGカップ、至高はHカップだ! なぜって、ほら、Hカップってもう響きがヒワいじゃないか、そうだろそうだろ!」

 俺は歌いながら、ケイデンスを安モンのママチャリ限界まであげる。

「おっぱい、おっぱい、おっぱいいいいいいいいっ!!」

 顔を激しく体を強く揺さぶりスパイダー。飛び散る汗もまた、心地いい。

「え……」

 そうしたらどうだ。

 たまには前でも見てやろうと顔を戻した瞬間、そこにはおっぱいがあった。おっぱいが待っていやがった――まるで、こっちにおいでカモンと誘うように、ぱっくりと胸元の開いたひらひらの服を着た女がふわりと浮いて待っていた。

 だが、頂けない。こいつは俺が大好きなFGHの範疇ではない。

 触った事はもちろんないが、この目に嘘はない。

 もちろん、そんな場合じゃあない。とりあえずとまらないと、事故発生からの損害賠償で親も泣く。

「んあっ!」

 両手一杯でブレーキを引き絞ったが、ママチャリはとまらなかった。ひごろケイデンスとスパイダーで競技チャリごっこをさせ続けたため、俺には告げず、こいつ引退してやがった。

 引き絞る握力に耐えきれず、両方のブレーキワイヤーはちぎれ飛び、俺はややひかえめなおっぱいにダイブした。

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