ウリ

@hougen

第1話 急カーブして、弧を描いた


清算を済ませるため、列に並んだ。

退場予定の時間が迫っている。

(これを過ぎたら、延滞料金を取られるのだろうか?)

高くつくかもしれない無駄な出費に、予感で心の中、ざわめいた。


列は乱れている。支払いカウンターから無駄に急カーブして、弧を描く。

その原因は、目の前に並ぶ男…の横。横に急カーブして並ぶ、女子高生3人組。

日曜日だから。

ラウンドワンのスポッチャは、平日には見せない忙しさで混んでいる。

列は、ゆっくりと時間を掛けて進んでゆく。

女子高生3人組のひとりが、ちらちらと後ろを確認するように振り向く。

「…わずらわしい」と、思った。

ちらちら、ちらちら…落ち着かない気持ち。

こういう奴は、良くいる。

例えば、バスに乗って、前方の席に座るひと。

左を向いたかと思えば、首の角度が深まりちらりとやや後ろを確認。

首ごと振りつかせて、左右往生。

「…わずらわしい」と、後ろから視線を強く向けてやると、パッと首が逃げる。

女子高生3人組のひとり、わずらわしい子。見た目は、高校1年生かな?

おかっぱ気味の髪型、あのふんわりとした感じ。中学生にも見えるけれど…いや、高校1年生の雰囲気を感じる。

そんなことを思いながら、急カーブした列の支払いを待った。


店内の外に出た。

3月で、5時40分過ぎ。夕暮れは深まり、気温も低下。

駐車場へ向かう通路、視界がかすんだ前方に人の姿が立ち留まる。

近づいて行くと、さっきの女子高生3人組だった。

「あはは、あはは」何が楽しいのか、少しの不純を秘めた笑い声。

こっちを見ている。

視線を外しながら、僕は通り過ぎようとした。

過ぎようとした視界に、ちらちら見ていた女子高生が映った。

僕の顔を覗きーー乱れた


「暇なの」


「遊ぶ?」


とっさに

切り返していた


「暇なの」と悪戯っぽく向けられた

それに「遊ぶ?」と、乱された


「あはは、あはは」不純を秘めた笑い声が上がった


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