感想『86―エイティシックス―』
『安里アサト』氏による第23回電撃小説大賞『大賞』受賞作。
という看板で購入したわけではなく、単純の好みっぽい話だったので購入。
なるべくネタバレを回避しながら、感想を書こうとす。
てけてけてけてけてけてけてけ。
――――
最後まで読み終えた感想としては、新人賞受賞作とは思えないほど、シナリオプロットがしっかりとしている作品だと思いました。『差別(迫害)』という明確なテーマに挑み、それをきちんと書けているという印象です。
作中では様々な『差別』の形が描かれており、一言で『差別』と言ってもそれには様々な形があるということを改めて思い知らされました。同じ状況に陥れば、それに逆らうことは誰にだって難しく、逆らったとしても現実は非情なだけなのです。
そのため最近のライトノベル流行とは違い、作品全体の雰囲気は暗く、静かな狂気が蔓延しているという世界観。そのため序盤からフルスロットルで嫌な気分にさせる展開が多く、この時点で読者を選ぶ作品でしょう。
個人的に感じた最大の問題点は『戦闘シーン』があまり盛り上がらなかったことですね。『視点変更の多さ』や『全体的に淡々(あっさり)と進行していく』ということもあり、作品としての感情移入のし難さがそのまま『戦闘シーン』にも影響したのかなーと思います。後、文章の書き方もちょっと伝わり難いかなーと。
読者が登場人物に感情移入しながら読むタイプの小説ではなく、読者が第三者として物語を俯瞰しながら読むタイプの小説ですね。たぶん。
簡単に言うと『電撃文庫』ではなく『ハヤカワ文庫』で出版されるような作品かなーと思いました。良くも悪くもですが。
個人的な感覚だと、アニメ向きの作品。
むしろアニメをそのままノベライズ化したような作品だと思いました。
うーん、小説表現と言うよりアニメ表現に近いものがあるような気がします。
『戦闘シーン』もアニメで見たならばもっと楽しむことが出来たでしょう。
『メカ戦闘小説』として楽しむ作品というより、
『なぜ人は人を差別するのか?』
『差別された側の人間はどう生きればよいのか?』
というような読者に考えさせる作品かと。
あまりライトノベル向きの作品ではないかもしれません。
でも、それをあえてライトノベルとして販売したことで、逆に希少価値が出る作品かもしれませんね。ヒットするかは別としてですがねー。
おそらくラストの展開も賛否両論だと思いますし。
小生は『賛』ですけど、『否』の意見も十分に理解できますね。
この辺りはレーベルの違いという奴でしょう。
他にも上下巻ぐらいでもっと丁寧に描写した方が面白い作品になった、という印象も残りました。『差別』という重いテーマのせいかもしれませんが、あっさりと流してしまうシーンが多く、それも感情移入がし難い理由の一つだったかと。
そういう意味では完璧な作品ではなく、この作品を補完するような短編集が必要かなーと思いました。発売したらおそらく購入するかと。
最後まで読んでも『あれ』とか『これ』とかどうなったんだ、という疑問は残ってしまいましたし。でも、まあ、それを『余韻』と呼ぶのかもしれませんね。もしくは『読者が判断しろ』かな。『続編があれば続編で書く』かもかも。
えーと、最後にもう一つだけ気になったことがあり、それはこの『86―エイティシックス―』という作品が某アニメ作品と設定が似ているということです。もしかすると、そのことでちょっと騒がれるかもしれません。
最後まで読み終わったときに得た感想は別なので、個人的には問題ないと思いますが、それでも読んでいて、その作品の影がちらつく程度には似ていると感じてしまいました。
まあ、後は製作者サイドの問題でしょう。
一読者としてはちょっと似ているかなーぐらいのことです。
個人的には今後が期待できる新人さんが現れたかなーと思います。
毎回読みたいわけではありませんが、こうして叩き付ける系統の作品も小生は好きですね。辛く悲しい世界だからこそ、見出せるモノもあるというお話。
終わり。
――――
うーん、余計なことまで書いた気もしますが、絶対指摘する読者はいると思うので、小生も書きました。難しい問題なので、これ以上は語りません。
結論:次回作も購入を検討する新人さんの登場。
以上。
<小生は新星の誕生を望んでおります、以上>
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