からくりサーカス

「今回はからくりサーカスですか」


「この作品も熱い作品でしたねぇ」


「当時は錬金術がブームでそれをテーマにした作品が幾つもありましたねぇ」


「ジャンプの武装錬金にガンガンの鋼の錬金術師、そしてからくりサーカス」


「アニメになっていないのはこの作品だけですな」


「舞台にはなったけど」


「えっ、そうなんだ」


「大々的に宣伝していた訳でもないしね。今みたいに漫画原作ミュージカル全盛期でもないし、知らない人は多いと思う。私も舞台になったのを知っているだけで詳し内容とか全然知らないし」


「逆に今原作を連載していたらその手のミュージカルになっていたかもね」


「ミュージカルから実写ドラマ化って弱虫ペダルのような例もあるし」


「いや、からくりを実写ドラマ化しちゃダメだろ……ヘボい特撮でお茶を濁されるのがオチ」


「うしとらがアニメ化した流れでからくりもアニメになればいいのにねぇ」


「でもうしとらは白面を倒す話に特化したから3クールにまとめられたけど、からくりはそんなに削る要素なくね?出来れば全エピソードやって欲しいし、そうなったら最低2年位は放送しないと」


「そこだよね。削っていいエピソードなんてないんだよ、からくりは」


「でも本当にアニメ化の話が出たら削られまくる未来しか見えないけど」


「そこは妥協すべきなんだろうね……悲しいなあ」


「からくりサーカスと言えば2人主人公の作品だったね」


「二人が別れて独立して話が進む事があるんだけど、全然展開が違うんだよね。王道のパターンが鳴海の方なんだけど、それに対して勝の話は出生の秘密もあって謎ありどんでん返しありチートありの現代タイプの話で、読者を飽きさせなかったね」


「広げた風呂敷をここまで綺麗にたためた話を私は他に知らないよ」


「散りばめられた謎もそうだけど、最後に本当にうまく収束したから構想を本当にしっかり練ったんだなあって感じがするよ」


「構成だけじゃなくて、藤田先生らしい熱いバトルも手抜き一切なしだもんね」


「熱いバトルと言えば死んだキャラは復活しないんだ。これも好きだな」


「キャラが死ぬエピソードはどれもが激アツで徹底的に良い見せ場があるんだよね。二度と復活しない代わりに心に傷を残す。そりゃ忘れられないよ」


「アレだけ読者を泣かせておいてひょっこり復活したらそっちの方が興ざめだもんね」


「って言うかからくりサーカスは良いエピソードが多過ぎて逆に紹介出来ないって言う……」


「うっかり語り出すと全部語らなきゃ収まらなくなるもんね」


「ストーリーでも楽しめて、アクションでも楽しめて、恋愛要素もあって……本当に藤田流の贅沢なショーを見せて貰ったって感じだね」


「いつかアニメ化が叶うなら是非とも全エピソードのアニメ化を望みます!」


 と、言う訳で今回のテーマはからくりサーカスでした。

 会話文であらすじとか書きませんでしたけどそれは長くなっちゃうから。

 本当にストーリー構成が複雑なんですよね。どんでん返しも多くて少しでも話を飛ばすと訳が分からなくなっちゃう。こんな複雑な話をよく最後にうまくまとめたなって、それだけでも感動しますよ。


 それでも簡単に説明するとこの作品は人形を壊す話です。人形が人を襲うんですよ。怖いですねぇ、ホラーですねえ。

 サーカス要素も作品にうまく取り込まれていてよく研究されているなあって感じます。実際沢山の資料を参考にされていたみたいです。


 この作品には主人公が2人いて、時には2人一緒に、時には別々に別れた話は進みます。その話の展開がまた全然違うんですよね。年齢差もあって大人側の主人公の鳴海は孤独な戦いを。子供側の勝は仲間と共に。どちらの主人公を待ち受ける運命も過酷なところは変わらないんですけどね。2人がそれぞれきつい運命を乗り越えていくからこそ合流した時の興奮とかたまらんものがありました。


 メインの敵である自動人形達もまた個性豊かなんですよ。様々な方法で主人公達を危機に陥れるのですけど、ただ憎らしいだけじゃなくて、まるで人間のような個性もあって、しかも捕まえて手を入れる事で強力な味方になってくれたりもして。


 作品の時代も現代やら過去やら入り乱れてすごく根の深い物語が展開されていきます。錬金術要素なんて最初は全く見えないんですよ。でも発端がそれなんです。しかも歪んだ恋愛感情が始まりなんです。謎がひとつ解明されるたびに伏線がうまく繋がっていくので感心したものでした。


 うしおととらでは最後に日本全土が恐怖に包まれましたが、からくりサーカスでは更に規模を広めて終盤では世界が滅亡の危機に陥ります。藤田作品と言う事で分かると思いますけど、その絶望感は半端ないです。だからこそ助かった時の開放感も桁違いなんですよね。


 本当に面白い作品なのでどこかで目にした時は是非読んでもらいたいです。

 ただし、ひとつでも抜けるとダメですよ。1巻から最終巻まですべて通して読んでこそです。通して読んだ時に得られるカタルシスに打ち震えて欲しいと思います。

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