第30話 フィンランディアじゃない?

その年、コンクールの自由曲はなんと、「フィンランディア」を選択できませんでした。理由は長すぎるからなんです。


そしてコンクールの結果は、大方の銅予想に反して「銀」でした。


ほとんどのレギュラー・メンバーが2年という構成でしたが、それなりには上達していたということです。ちなみに定期演奏会とかでは「フィンランディア」を発表できるまでになっていました。


銀も今思えば「大したものなのだが」当時は、かなりへこみました。

現在でも金・銀・銅などという評価方法が続いているが、こんな評価が本当に良いのか?という疑問が残る。なぜって金を取った学校が5校あれば、その真の評価順位を知りたいのは当たり前だし銀を取った10校も同様だろう。なんだか「うやむや」にされているだけのようでスッキリしないのです。優劣を評価するために一生懸命に練習しているのに、皆よくできました。はい、貴方と貴方は金です。双方ともに1番ですって実は、すっきりとはしていないのです。たしかに芸術を評価するのは審査員の評価や基準が一定ではないので難しいのかもしれないが、


それでも・・である。


某高校の先生

 「とても良かったですよ。特にラッパがすごい!」


F先生

 「ありがとうございます」


某高校の先生

 「うちとこでも、こりゃ、かなわんかも知れん」


F先生

 「いや、まだまだですヨ」


といいながら、まんざらでもなさそうです。

部員もこの曲だけは自信を持っていました。

ペットも例のフレーズは、99%ピタッとうまくいく自信を持ってました。

これは願望ではなく現実として魂の宿ったサウンドを生み出せていたと思っています。しかしレパートリーがあまりに少ないというのが課題でしたが、そのころから初見の譜面でもほとんどのメンバーがピタッと揃うようになっていたというのは、不思議な感動でした。


その頃、合同練習の時にふと思う事は、この演奏は二度とないことなんだな。

という感覚を理解できるようになりました。


特にオケや吹奏楽の場合、メンバーが全て揃って1つの曲を演奏して、それも良い楽曲として空中に放出しているメンバーの一人として自分がそこに存在しているという感覚というのは、形容しずらい幸福感があるのです。

そして、それは二度と遭遇できないことなのです。なぜなら、そのメンバー、体調、運を含めて、偶然のたまものという部分もあるからです。さらに時間を経過すれば同じメンバーが全て揃うとは限らないからです。その奇跡の瞬間を何度も味わってしまうと、この世界から抜けられなくなるのです。


2年の後半からは、新曲が次々に注ぎ込まれましたが、あいも変わらず「フィンランディア」は徹底的にしごかれます。


F先生に「何か思い入れがあるのか?」と思う位です。

その頃は、ずいぶんクラがしごかれてました。

ペット3人トリオは、実力が同じように上達していきましたから、いわゆるブラスは、同程度実力の3ペット+2ペット+3ボーン+3ホルン+2ユーホ+1バリトン+3バスで、十分なブラス音量です。

とはいっても、所詮は中学レベルですから1人1人の実力は、たいしたことないんですが当時は、なぜか自信を持っていました。


社会人になってJazzコンボバンドを6人編成でやる段になって実力の無さを思い知らされる。「俺って、こんなに下手っぴだったんだぁ!」所詮は中学生がお互いを補って1曲を作り上げていたという事に否応なく気付かされることになるのです。


当時、私達が目標としていたのは西宮市立今津中学校吹奏楽部です。

その当時の今中は、すさまじいテクニックで全国を圧倒していました。

その後、まさか私が社会人になって、西宮市吹で得津先生に遭遇することになるなんてのは、夢にも思ってませんでした。

私は、社会人なのにサード担当でした。ファースト、セカンドは現役の中学生だった。それ位上手いのです。その後ですが、私は西宮市役所近くに住んでいたので、得津先生の葬儀の演奏も聴きました。


当時の今中の伝説の演奏です。↓

https://www.youtube.com/watch?v=-HMVazanNiA

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