社会人野球の選手も野球選手

煌木咲輝良由花

プロローグ


 日本のドラフトのシステムでは、複数の球団から同時指名される選手が出てくる。


 これがアメリカになると、完全ウェーバー方式が採用されているため、そのような事にはならない。

 簡単に説明すると、前シーズンの順位が低かったチームから、順番に選手を指名していく方式だ。弱いチームほど、好きな選手(優れた選手)を獲得出来る。



 日本のドラフトに話を戻すと、指名した球団の数が多いほど、その選手の格が高いと言える。


 指名がかぶる事を「競合」と言うが、競合になった場合、クジ引きが行われる。当然ながら、当たりクジは1つのみ。

 ハズレを引いた球団は、新たな選手を指名する事になる。その際にも競合が発生すれば、またクジ引きである。

 そこでもハズレを引いた球団は、ハズレのハズレの指名をする。



 ある年のドラフトで、水原という投手が1位指名された。

 1位とは言っても、ハズレのハズレであるが。

 

 ハズレのハズレでも、1位指名されるだけの実力はあった。

 アンダースローに限定すれば、大学ナンバー1とも言われる右腕だったのだ。


 得意な球種はシンカーで、彼のシンカーは、ほぼ真下に大きく沈む。三振を奪うタイプではなく、ゴロを打たせるタイプのピッチャーだ。



 1位指名を受けた時、水原は大学にいた。


 彼以外にも指名を待つ選手がいたが、その中には、日下部という若者がいた。

 ポジションはショートがメインだが、内野と外野ならどこでも守れるという器用な男だ。



 日下部と水原は、高校時代からのチームメイトだった。


 いつかはプロの舞台で──。

 その夢を抱いていた2人だが……。



 日下部は、指名を受ける事が出来なかった。

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