第11話 切っ掛けを拾う 5

「それで? リィのおじさんはこれからどうするの?」

 ウトゥアの問いに、リィは少しだけ困ったような、迷うような顔をして考えた。そして、少しだけ不機嫌そうに顔をしかめて言う。

「当初の予定通り、故郷へ帰る。到着が遅くなって、心配しているだろうからな」

 リィがそう言うと、ウトゥアは「うん、それが良い」と頷いた。そんなウトゥアを、リィは訝しげな目で見詰める。

「急いで行く場所があると言っていたな。……今度は、どこへ?」

「さて、ね……」

 はぐらかすように言うウトゥアに、リィはますます顔をしかめた。

「……どうやら、あの噂は本当のようだな。自由奔放で、時折城からふらりと消える宮廷占い師。実は占い師の他に、斥候も兼ねていると……」

 リィの言葉に、ウトゥアは「何それ、カッコ良い」と笑った。

「けどまぁ、確かに今回の旅の目的は斥候と言われても仕方無いかな。……ちょっとね、調査したい人がいるんだ」

 そう言って、ウトゥアはにこにこと笑う。その様子に、リィは諦めたように溜息をついた。

「その様子では……これ以上の事はどう聞いてもはぐらかされて教えてはくれんのだろうな」

「そうだね。ついでに言うと、私の目的を知っちゃったリィのおじさんより早く出発するつもりも無いよ。……あ、口封じのために追手を差し向けて……なんて事はしないから、安心して里帰りすると良いよ」

 にこにことしたままの不穏な発言に、リィは冷や汗をかいた。

「まったく……物騒な事だ……」

 そう言って旅立っていくリィの後姿を眺めてから、ウトゥアはきょろきょろと辺りを見渡した。そして、門の周辺で暇そうにしている兵士を見付けると、捕まえて問いかける。

「ちょっと聞きたいんだけど……タチジャコウ領へ行くには、どっちの道を行けば良いのかな?」

 問われた兵士は少しだけ思い出す素振りをすると、「あっちだよ」と道を指し示した。ワクァ達が行ったのとも、リィが歩いていったのとも違う道だ。

 ウトゥアは兵士に礼を言うと、そのままその道を歩き出した。そして、ふ、と足を止めると、ワクァ達が歩いていった道を眺め、そしてはるか遠くにあるヘルブ街に向かって呟くように歌った。

 

 君がこの先向かうのは

 混血の民が住まう街

 君は思わず足を止め

 少女は一人歩を進め

 国に響くは子守唄

 やがて火種は顔を出し

 優しきかいなが君を抱く




(第五章 了)

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