第13話 再び心の内を拾う 2

「マフ、無事!?」

「おい、何があった!? 子ども達は……」

 言いかけて、ワクァは固まった。別に、血の凍るような惨劇が広がっていたわけではない。

 昼寝から目を覚ました子ども達が、マフとやんちゃに遊んでいる傍目には平和な光景しかそこにはない。

 だが、遊ばれているマフにとってはとんでもない事なのだろう。子ども達の腕の中で必死にもがき、ヨシ達に援けを求めている。

「マフ……そんなに遊ばれても、子ども達を怪我させないように全力で暴れないようにしてるなんて……」

「おい。マフはおもちゃじゃないぞ。嫌がっているようだから、放してやれ」

「はーい」

 ワクァに言われて、子ども達は素直にマフを手放した。解放されたマフは、慌ててヨシ達の元へと駆け寄ってくる。そして、それと同時に子ども達も一斉にワクァ達に駆け寄り、群がってきた。

「ワクァにーちゃん、どこいってたのー?」

「このおねーちゃんだれ?」

「ぼくしってるよ。このおねーちゃんのおとーさん、バトラスぞくのリオンおじちゃんなんだよ!」

「そーなんだー!」

 子ども達はワクァ達の言葉も待たず、どんどん喋り続けている。そして、嬉しそうにニコニコと笑いながらワクァ達に言った。

「ワクァにーちゃん、こんどはけんじゅつごっこしようよ!」

「おねーちゃんもいっしょにあそぼー!」

 くっついて離れない子ども達にマフは怯え、ワクァとヨシは苦笑した。そして、ワクァは困ったような顔をすると子ども達に言う。

「もう夕方だぞ。そろそろお前達の父さん達が迎えに来る頃なんじゃないのか?」

 その言葉に、子ども達は顔を見合わせた。次いで、世話係の女性も不思議そうな顔をする。

「ホントだ。きょうはおとーさんたちおそいね」

「ねー」

 民族性なのか、たまたまなのか。ウルハ族の子ども達はかなりのんびりしているようだ。少しだけ嫌な予感を覚えながら、ワクァは集落の出入り口に繋がる小道を見た。

 その時だ。小道の向こうから、走ってくる人影が見えた。見れば、それはウルハ族の族長、ショホンに他ならない。

「あ、ぞくちょー!」

 子ども達が嬉しそうに声をかけるが、よほど慌てているのかショホンは子ども達に応えない。代わりに、世話係の女性に視線を向けると彼らしくもない早口で言った。

「ファベット、子ども達をテントの中へ。私が声をかけるまで、絶対に出ないようにして下さい」

 そう言って、次にショホンはヨシとワクァに目を向ける。

「ヨシさんにワクァさん! 丁度良いと言っては失礼ですが……手を貸して頂けませんか?」

 言いながら、ショホンは既に来た道を戻り始めている。わけがわからないまま、ヨシとワクァは慌ててその後を追う。

「ちょっと、何があったってのよ?」

「子ども達をテントに入れる必要があり、俺達が手を貸せる事……まさかとは思いますが……?」

 ワクァの言葉に、ショホンは足を休めぬままに言った。

「そうです。集落の外で、戦闘が始まっています」

「戦闘!?」

「一体何と……」

 緊張を顔に浮かべながら、ヨシとワクァはショホンを見る。ショホンは苦々しい顔で答えた。

「奴隷商人達です。奴らが、奴隷狩りに……ウルハ族の人間を捕まえようとやってきたんですよ……!」

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