11 出産

 父と母が結婚して約一年後に姉が産まれる。

 母が十六歳のときだ。

 父と母は母が十六歳になったその日に婚姻届を提出している。

 それまでは許婚という間柄。

 母の初産は大変だったらしい。

 破水に気が付かず陣痛が来て家が田舎なので病院に行かずに産婆を呼ぶ。

 後で必要なので医者も呼んだが姉を母から取り上げたのは年老いた産婆だ。

 産まれた姉は小さかったが生きて産まれる。

 母は産婆から産まれた赤ん坊が父に良く似ていると言われたらしい。

 でも皺くちゃの赤い猿みたいで仮にそうだとしても全然わからなかったわと後に母がわたしに語る。

 それがしばらく経つと目も鼻も口もお父さんに似てきて吃驚したとも言っている。

 わたしに似たのは耳の形と髪質くらいかしらとも母は言う。

 父は当時のやんちゃな歌舞伎役者みたいな顔立ちをしていたので姉は美人だ。

 けれども母から受け継いだ要素が少ない分だけ高値の花度は低いだろう。

 それでも赤い着物が良く似合ったりするのは母譲りなのだ。

 わたしと並べると見劣りするのは否めなかったが。

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