嫌われ課長と不機嫌な猫

ちなみ

第1話 人が拒絶を理解するには、猫に無視されればよい

私は課長が嫌いだ。


「ゴトーさん、これやっておいてよ。当然でしょ?やらない理由はないよね?」みたいに課長に、話しかけられるだけで、気持ち悪いなぁと思ってしまう。


人生でこんなに人を嫌いになったのは正直初めてで、そんな気持ちで毎日出社しなきゃいけないのも気が重い。


「○○って、空気作り失敗したサービスだよねぇ」

課長が意味もなく大声で○○を作った部署に聞こえるように話す。


あぁ、なんでそう意味もなく敵を作るのだろう、と私の胃はキリリと痛む。

課長は、全方位に敵を作る発言をしがちで、そのフォローを私がしないといけない。イケメンじゃないし、言うことは気分屋だし、単なるオッサンじゃないか、と思うのに私の上長なのが憎らしい。

部下というだけで、どんなに理不尽な命令も聞かなきゃいけないのだろうか。


あぁ、早く家に帰って猫を撫でたい。

私は机の下でコッソリスマホを取り出して自宅の猫、モチの写真を眺める。

モチは私が拾ってきた白いフワフワの猫だ。丸まって寝る姿がお餅みたいで「モチ」と名付けたのだ。


「あぁ、モチに会いたいなぁ。」

写真を見つめて思わず呟いた。

近くの席にいた課長が

「ん?何か言ったか?」と呼んだので

「いえ、なんでもありません」と即座に答えた……


そう、答えたつもりだったのに。


私は何故か会社椅子の上で、



ーーーー--猫の姿になっていたのだった。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る