LEVEL 3
ガス器具の点検、そう題された命令書が手元にある。
これが事実なら今日、午前9時から12時までの間にガス点検に敵が来る。
点検に立ち合えとの親父命令も出ているので敵を家に入れなければならない。
こんな完全不利な状況は久しぶりの経験だ。
ピンポーン
「こんにちはー。ガス点検に来ましたー」
来た。
待て、本当にガス点検のヤツか?
点検と言うんだからその回り方は地域毎に行われている筈。
なら、この辺りで点検している事を知った敵が、わざわざ命令書を作成して虎視眈々と攻撃チャンスを伺っている可能性がある。
ここはいつものように炊事場の窓から様子を見るとしよう。
カララ・・・
「あっこんにちはー」
っ!!
コイツ、反応が早い!ただ者じゃない?!
くそ、姿を見られた以上招き入れなければ変に目立つ。
相手が攻撃に転じた瞬間、こちらも攻撃に移るしかない。
「あ、はい。こんにちは」
ガスメーターや湯沸し器の回りを、変な機械で調べ、特に変った様子も見せない男。
こちらの様子を伺ってるのか?
「今日は寒いですねぇ」
先制攻撃のつもりか?
「昨日より、寒いですね」
「これだけ寒いと嫌になりますねぇ」
重ねてきやがった!
カバンに仕込まれているタッチパネルで何かを調べ、書き込みながら男は変な器具をガスコンロにかざしている。
「これ、簡単なアンケートになってるんで、分かる所だけで良いので書いてください」
受け取った紙には確かにいくつかの項目が記され、そのどれかに丸を付けろと言う命令口調の代物だった。
そして攻撃が密かに始まっていた事を記す代物だった。
安心点検プランに興味がありますか?だと?!
しまった!
コイツ、最初からこれが目的か?!
慌てるな、落ち着け。
男は分かる所だけ書け、確かにそう言った。ならばここは興味なしと答えるより無視する方が得策だ。
安心点検事態を知らなければ興味も何もない。下手に答えるよりも安全な筈だ!
「はい。書けました」
さあ、どう出るか。
「安心点検プランをご存知ですか?」
やはりそれが目的か。
「いえ」
「木場さんのお風呂は7年目になりますでしょ?無償でバラして点検するんです」
なに・・・コイツ、今なんて言った?
風呂が7年目だとか言いやがった。
そんな細かい内情も知られている?!
無償なのは点検だ、なにかに付けて買い替えや取替えを迫る気でいるに違いない!
こんな不意打ち攻撃があろうとはな。
ここで負けて点検すると言う事にされ、尚且つ高額請求されたら親父に殺される。
なんとしても阻止しなければ自宅警備兵の名が泣くと言うもの!!
「そう言う点検の話は聞いてません。結構です」
「あ、そうですか。それでは2年後にまた点検に来ますので」
フッ。
ミッションクリアーだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます