自宅警備兵

SIN

LEVEL 1

 俺は20代。

 高校をそこそこの成績で卒業し、大学には受験すらせず社会へ飛び立とうとしたその他大勢。

 そんな俺の職業は、ニート。

 いや、あえて言おう。

 自宅警備兵と。


 俺が警備する場所は3DKの一軒家。

 築は俺と同い年だと言うんだから親近感が持てる仕様になっているが、あちこちにガタがきている。

 そんな所も俺と良く似ている。

 親父と弟、そして俺と言う男所帯で、親父と弟が会社と言う戦場で働いている中、俺は自宅と言う一見平和そうに見える激戦区を任されたのだ。

 さぁ、今日もしっかり警備しようではないか!

 TELLLLLLLLLL

 電話がなっている。

 時間はお昼時よりも少し早い午前11時、こんな時間にかかってくる電話などは殆どがセールスの類か、年金未払い請求の催促電話に違いない!

 ただいま留守にしております。ご用件は・・・プツップープープー

 留守電だからとメッセージも残さずに切ると言う事は、セールスだったか。

 ピンポーン

 誰かやって来た。

 ここは慎重に慎重を重ねて様子を伺おう。

 ピンポーン コンコン

 今度はノック付だ。

 そんなにドアを開けさせたいのか!なにを企んでいると言うんだ!新聞か?!まさか未払い請求に家まで攻め入って来たのか?!

 くそっ!敵にアジトを知られている分かなり不利な状況、ここは更に慎重に行動しなければならない。

 ピンポーン

 「木場さ~ん宅急便で~す」

 宅急便だと?

 あぁ、確か弟がヤフオクで競り落としたPS2が届く頃だと言っていたか・・・だがしかし!自称配達員の男の言葉を鵜呑みにして門を開いて良いのか?

 良い訳がない。

 俺は自宅警備兵、この屋敷をたった1人で守る最後の砦だ!

 よし、敵はドアを開けさせ押し入るのが目的だろう。ならば押し入れない場所から荷物を受け取れば良いだけの事、その際他の敵に姿を見られないようにしなければ。

 カララ・・・

 炊事場の窓を少し開けて敵の姿を確認。

 確かに宅急便会社のロゴマーク入りの制服と、その手には少し小さめのダンボールが1つ。あの大きさからしてPS2には違いないだろう。それに宛名の所には弟の名前が確認できる。

 よしよし、この男が配達員だと言うのは認めよう。ならばさっさとモノを受け取らねば。後日受け取りに、なんて命令書なんかポストに入れられて退却されたら弟にキレられる。

 「はいはーい」

 如何にも今気付いたとばかりに声を上げ、少しだけ開けていた炊事場の窓を開けると、配達員の顔はこっちを向き、受け取りの判子を、なんて言ってきた。

 判子だと?!

 なんの、どんな書類に判子を押させようと言うんだ!それは本当に受け取り確認の為だけの物なんだろうな?

 いや、ここは落ち着け。

 こんな経験など1回や2回じゃないはずだ。落ち着いて対処すればこんな雑魚敵などスグに帰る。

 「サインで良いですか?」

 「あ、はい。いいですよ。ここにお願いします」

 フッ。

 ミッションクリアー、と言った所か。

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