第八章――【眠れる森の美女】編――
第1部
正直、今まで旅してきたどの童話世界と比べてみても、今回程パンドラが困惑し、またある意味で苦戦を強いられた童話世界は無かったであろう。
時空間航行の末、ムーンアークが辿り着いた世界はそんな世界であった。
「ドライブアウト完了。新しい世界にt・・ん?」
「どうした?」
報告を途中で止めたキタカゼに、パンドラは続きを促す。
「イヤ、座標とかの計器類が何故か安定しなくて・・・・・・船自体は安定してる筈なのに・・」
「何? 故障か? ならばトーマスの奴を呼んでおけ。船はここで停止。周囲の計測を始めろ」
「了解」
「私は直接外の様子を見てくる。何かあれば連絡しろ」
「承知した。気をつけてな」
「あぁ」
そう言うと、パンドラはメインブリッジを後にし、出撃ゲートからムーンアークを発艦した。
「さて、と・・ん?」
地上に降り立ったパンドラだが、そこで自身に起こった違和感を目の当たりにする。
「何だコレは!?」
「どうした主よ?」
「身体が縮んでいる!」
「なッ!」
発艦するまでいつも通りだった筈のパンドラの頭身が、首から下は三分の一まで縮小し、頭は一回りはデカくなっていた。
「大丈夫かい? どこかで薬を飲まされたりしてないかい?」
「やめんか!」
そう言いつつも、パンドラは周囲を見渡し、怪しげな取引の現場も後ろから近づいてくる人物もいない事を確認し、そっと胸を撫で下ろす。
「・・とにかく情報を集められそうな場所を探す」
冷静を装いつつも、若干の青ざめた様子で、パンドラは生体波導の多い方へと重い足を進めた。
《町》
「・・・・・・」
ざっくりとそう書かれた看板を前に一瞬言葉を失ったパンドラであるが、気を取り直して町へと入ると、適当に目に付いた男に早速尋ねる。
「すまないがそこの御仁」
「ん?」
「人を探しているが、ここに童話主人公というのはいるかね?」
「悪いが、ここしばらく姿を見てない。ったく、この肝心な時に・・」
「何かあったのか?」
「メリーの奴がいなくなったのと同時に、訳のワカラン怪物がこの辺りを暴れ回るようになってな。以前ならメリーの奴がやっつけてくれるんだが・・・」
「メリー・・童話主人公はメリーというのか?」
「あ、あぁ」
「聞こえたかブリッジ、メリーという名で該当する童話を調べろ」
『承知した』
「さて、あとはその例の怪物とやらから辿って・・・・・・」
ズガァァァァァァン!
「・・辿る必要が無くなったかな?」
「で、出た~っ!」
一目散に逃げ去っていく男を尻目に、パンドラが衝撃の発生源を見上げれば、そこにはゆうに三メートルはあろう、巨大な男達?が武器を手に佇んでおり、それぞれ牛の頭と馬の頭が首の上に乗っていた。
蝶々仮面のパンドラ 第八章――《眠りの森の美女》編
《眠りの森の美女編――第2部へ続く――》
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