第68話 恋人っぽいこと



 竜也が滝川一益と共に諏訪氏の説得に行く間、俺は佳奈美と一緒に諏訪郡周辺にて珍しい農作物を探すことにした。



 「この時代にわさびってある?」



 「わさびねえ、あるかなー」



 俺は、佳奈美にわさびがあるのか聞いてみるが佳奈美でも知らなかったようだ。


 わさびの話を昨日したのでてっきりこの時代にわさびがあるものかと思っていたが、そうでもないようだ。



 「じゃあ、探すしかないのか」



 「わさびってどこにあるの?」



 「川のほとりとかにあるはず。清流の横で自生したり育てていたりするのを前にテレビで見たことがある」



 「じゃあ、近くの川でも探しますかね」



 佳奈美が川を探そうと提案してくるので俺も川を探すため周りをきょろきょろしてみる。


 でも、近くに川はありそうにはない。


 でも、少し遠くに水があるのだけは見えた。



 「あの水辺にでも行ってみるか」



 「うん」



 俺らは2人で水辺に向かって歩き出す。



 「ねえ、忠志君」



 「何、佳奈美?」



 「あ、あのね。私達つ、付き合っているでしょ」



 「え? あ、そ、そうだね」



 佳奈美からの突然の言葉に俺は驚いてしまった。


 ちょっと、その言葉を聞いてドギマギしてしまう。


 顔が自然と熱くなっていた。



 「あ、あのね、手、手つながない?」



 「そ、そうだね」



 手をつなぐ。


 恋人が行うような行動だ。


 行うようだと言っているのは俺自身にそんな経験がないからだ。


 恥ずかしい。


 照れくさい。


 それが俺の気持ちである。


 でも、手をつなぎたいのも事実である。



 「手、つ、つなぐ?」



 おそるおそる俺は手を近づける。佳奈美の手へと。


 佳奈美の手を直視することができない。佳奈美の顔も直視することができない。俺は自分の手を適当に佳奈美の手があるだろう位置へと近づけていく。



 むに



 手ではない何かを触った気がした。


 何だろう。


 俺は手の先を見る。


 手の先は佳奈美の右足と左足の間の部分に当たっていた。つまり、佳奈美のあそこにあた──



 「忠志君のヘンタイ!」



 バシン



 俺は佳奈美に思いっきりビンタをされた。


 しかし、ビンタをされてもおかしくはない。


 だって、女子の大事な部分に触れてしまったのだから。俺も興味がないと言えばうそだ。あの秘境を見てみたいという性欲はある。でも、彼女に嫌われたくはない。同意がなければ俺からしようとは考えていない。



 「ご、ごめん」



 俺は謝る。



 「さ、触るなら、こ、こんな野外じゃやだよお」



 「へ?」



 佳奈美から返ってきた言葉は意外なものであった。



 「あ、あああ、ち、違うの。べ、別にヤりたいとかそんなことを思っていたとか、そんなんじゃなくてね」



 佳奈美が明らかに動揺していく。


 な、何かボロを出しているような気がするけど気のせいじゃないよな。



 「か、佳奈美落ち着け。いろいろとヤバイことを言っているから一回冷静になれ」



 「で、でも……忠志君とやっぱり恋人っぽいことをしたいよお」



 「にゃ」



 その言葉は俺の心に一撃を与えた。


 か、かわええ。


 可愛すぎる。


 佳奈美のことがものすごい好きだあああああ。


 思いっきり叫びたくなってしまった。


 しかし、抑えた。



 「手、手をつなぐだけにしよう」



 「う、うん」



 俺らはまだ高校生。健全な付き合いをしなくてはいけない。


 そう。それにこの作品はR18ではない。全年齢のためにも俺は自身の性欲を何としても我慢しなくてはいけない。


 だから、あえて雰囲気を壊さなければ。



 「わ、わさび探そうぜ」



 「……わかってやっているでしょ」



 佳奈美にジト目で見られるも俺は気にしない。若干ダメージをくらったがああ気にしない。


 俺らはわさびを探すため水辺に向かって歩き出した。


 

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