第17話 不思議な出会い
「おぬしは神様なのか?」
滝川一益にそう質問された。
俺は答える。
「違います」
そりゃあ、違いますって素直に答える。無礼であろうとなかろうとそう答えるに決まっている。前にも言ったが、新興宗教を俺は作ろうとは一切考えていないからな。
相手があの天下の織田家四天王の1人であろうとなかろうとそういった白黒はっきりすることはしっかりと言わないと気が済まない。
まあ、それで滝川一益までもが俺のことを神様だと信じて人の話を聞いてくれないとなればどうしようもないんだが、そこはしっかりしていると信じたい。
「そうか……ならば、いい。では、おぬしは何者だ?」
とりあえず俺のことを神様ではないということを信じてくれたようだ。
「俺は……未来から来た人間です」
「ほお、未来からか。そんな戯言信じるとでも思っているか、小僧」
そりゃあ、そうだ。俺は滝川一益の言葉に対してその通りだと思った。もし、俺が現代において目の前に現れた人間に「未来から来ました」なんて言われてみたらどう反応するかと言ったら、お前正気なのかと疑ってしまう。つまり、そんな頭のいかれた奴が今の俺であるということか。
「まあ、信じてはもらえないとは思ってますよ。でも、事実なのだから仕方ありません。あなたにはいちおう本当のことを言っています。そのうえで嘘だというのならば俺の話はここで終わりですね」
俺は、滝川一益という歴史的に有名な人物を一目でもいいので見てみたいという好奇心があった。そして、彼と話した当初の目的というのはこの好奇心によるものだ。そして、今その目的は果たしたし、彼自身も俺のことを疑っている。と、なれば今の俺がなすべきことは決まっている。
俺は話が終わったと思い、そのまま滝川一益に背を向けて戻っていく。
もうこれ以上話す必要性がないと判断したからだ。
「待ってくれ、こっちの話はまだ終わっていない。もう少し話をしようではないか」
俺が帰ろうとすると滝川一益に呼び止められた。
一体、俺にまだ話が残っているとはどういうことだろうか。
「話をしようとはどういうことでしょうか?」
「そのままの意味だ。我はおぬしに興味がある。だから、まだ話をしたいと思っておる」
「そう言われてもこっちから話すことがないので何とも言えないのですが……」
俺は、本当の事しか言わない。
そもそも滝川一益にそれほどの興味を持っていないからだ。前にも言ったが、俺の専門は近代史。時代としては第二次世界大戦直前の日本の政治史についてやっている人間だ。尊敬するというか興味があった人物は第32代内閣総理大臣廣田弘毅である。こんなバリバリ近代史をやっている人間が戦国時代の武士にいきなり興味を持てと言われてもなあ。困ってしまう。
「いや、おぬしが未来から来たという話だが、おぬしの態度から見て本当だと思った。それにこっちにも未来から来たと名乗る不思議な女子がおってなあ。おぬしはこの女子と知合だろうか?」
滝川がそういうと、俺の前に一人の女子が出てきた。
その女子は俺が見知った顔であった。
「歌川?」
「久しぶりね、小田君」
戦国時代で自分と同じ部活のメンバーに会うという不思議な出会いをしたのだった。
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