第九十一話 夜の手

「夜の手が忍び寄って来た」

「ああ」


「俺たちは、闇から逃がれなくてはならないのか?」

「さあ」


「それとも、このまま闇の中に沈めばいいのか?」

「さあ」


「どちらか決めないとならないんだろう?」

「決めなくても夜になるし、夜になれば自ずと夜の我々になる」


「……そうか」

「夜になって捨てる光。朝が来て捨てる闇。そのどちらにも我々は入っていない」



【 了 】

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