第5話

それなりの距離を保ち、中学の三年間はやり過ごした。周りの女子達も、私と郁彦が本当にただの幼馴染だと納得したみたいで、もう、私に取り入ってくる子はいなくなった。でもやっぱり、心から笑い合える友達も出来なかった。だから、だから・・・高校生活はおもいっきり笑いたい、楽しみたいと思っていたのに・・・それなのに!

高校でまた郁彦と一緒になった。志望校選択ギリギリ、私が出願した高校と同じ高校に変更してきたのだ!後でわかったことだけど、同じ高校行かせようと親同士が裏で画策していたらしい。こういう時、親のネットワークほど恐ろしいものはない。郁彦が受けるとわかっていたら絶対受けなかったのに・・・!そう文句を言ったところで、どう足掻いたって現実は変わらず・・・結局、郁彦と同じ色のブレザーを着る羽目になったのだった・・・

「何か詩織さ、高校入ってからますます可愛げなくなってないか?」

「ますますって何よ!」

「いや、言葉に棘あるってか、そんなに俺といるの・・・」

「可愛くなくて結構です!」

小学生の時、いじめから守ってくれた郁彦。あの場面が頭を過ぎり胸がチクっと痛んだ。

「わ、私、急ぐから!」

そう言って走り出した瞬間、何か異物を足に感じ目を向けると、そこには灰色がかった仔猫がいた。私は、仔猫のしっぽを踏んづけていたのだった。

「フギャー!」

仔猫の悲鳴にも近い鳴き声に驚き身体のバランスを崩した時、右足を強かに挫いた。

「うっ・・・」

「危ない!」

危うくコンクリートの歩道にファーストキスを奪われかけた寸前、郁彦が私の身体ごと抱きかかえてくれたお陰で、それ以上の怪我もなく大事故には至らなかった。

「詩織、大丈夫か!」

「猫・・・仔猫のしっぽ・・・」

「今はそんなこと気にしてる場合じゃないだろ!お前、自分の右足見ろ!凄げぇ腫れてるぞ!」

「そう言われてみれば、痛い・・・かも、あはは・・・」

どうしてだろう。こういう時は何故か笑いしか出てこない。泣きたいほど痛いのに。

「お前なぁ、笑ってる場合じゃないぞ、これ。」

「そんなこと言われても・・・痛たっ・・・」

「もしかしたら骨、折れてるかもしんない。これは病院送りだな。」

「えーっ!」

「えーっ!じゃない。」

「そんな、脅かさないでよ・・・」

「救急車呼ぶか?」

「止めてよ、そんな大袈裟なこと!」

「じゃあ、おばさんに連絡するぞ。いいな?」

「うん・・・」

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