第3話「人形の誇り」14
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「別に悪い奴らじゃないんだよ。……と俺自身思いたいし、使えるものなら使っていかないと。どうしたって俺らだけで解決出来るはずのない問題だし」
セルディ一派を使うと決めた後、昴はレイセスにその旨を報告していた。これと言って嫌悪していた訳でも危険視していた訳でもないが、雰囲気的に近寄り難いものがあったらしくそのわだかまりを解消する為である。
「いえ、わかってはいるんです。ただ何と言うか……」
「怖い?」
「怖く……はないです。彼らも貴族のご子息ですし……」
「苦手意識、かな? まあ俺も元々レイにあいつら近付けるつもりはないからな。俺を仲介役というか動き回る携帯……はないから、伝書鳩とかそんな感じだと思ってくれればいいよ」
自分では上手い事を言ったつもりなのだが、どうやら伝わっていないらしい。昴の記憶では伝書鳩、それに似た何かはあると聞き及んでいる。それが鳩ではないのかもしれないが。
「ともかく大丈夫さ。人を使うのも人に使われるのも割と得意だからな」
順応性は高い、と自負している。それこそこの世界に馴染もうとしている辺りだ。
「はい、申し訳ないですけどお願いします。それで、私たちは何をしましょう?」
「そう、だな……」
歩きながら考える。否、正確には既にやる事は考えてあるのだ。仲間は得た。次に必要なのは知識である。昴の持っている知識だけでは恐らく正解に近付く事は難しいはず。敵を知らねばならない、と考えていたのだ。
「ここは……保健室、ですか?」
「うん。話を聞くには最適だろうなってね。俺どうも教師ってのは好きになれないからさ」
『保健室の先生』とは昴の世界ではそれなりに生徒の心の依り代であったり、相談相手だったりと普通の教員とはまた違った距離感を感じられる相手だ。ある種特別な存在であった。そして女性であれば尚嬉しいものである――あくまでも一部男子の意見だ――。
「それにしてもスバル、随分と校内を迷わないで歩けるんですね」
「あー……まあ大体頭に入ってるからな。暇だったし」
「地図を作るって言ってましたけど……」
「ああ作ったよ。外の……寮とか校舎の位置はね。時間はあったからな」
言いながら戸を叩く。こちらの礼儀などはそう言えば気にした事がなかったのだが、恐らく正しいだろう。相手からの返答はないが居るだろう、と仮定して開く。
「失礼しやーす。アンリ先生いますー?」
「あ、はいはい! いますよ! あら。どうしたの?」
部屋の奥から慌しく現れたのは人間とはまた違った耳を持つ――昴の注目はそこであった――アンリ。
「実はですね、ちょっと聞きたい事がありまして……」
「んー……この耳の事かな?」
「え!?」
どうやら昴は気付かれていないと思っていたらしいのだが、丸分かりだった模様。驚きに言葉を詰まらせた昴に微笑みかけながらアンリは続けて言う。
「違うんだ? でも、その話は今度ね」
「……失礼します」
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