第1話「パラレルワールド!?」21
部屋の一角、何やら騒がしい箇所があった。遠目からでは良くわからないが、揉めているように見える。昴だけでなく他の生徒たちもそちらを見てはいるのだが、誰一人として関わろうとはせず見て見ぬ振りを決め込む。
それだけで大体何が起こっているのかは理解出来た。ならば、後は動くだけだろう。
「悪い、ちょっと道を開けてくれねえかな」
軽く断りを入れながら人混みを掻き分ける。
それを迷惑そうにする者、何ら気にせず避ける者、いそいそと席に着く者と様々。しかし昴はそんな者には目もくれず一直線に騒ぎの中心へと歩みを進めていく。中心地へ近付くに連れてどんな状況だったのかがより鮮明になる。まずは当事者が四人。一人は眼鏡を掛けた明らかに気弱そうな顔立ちの良い少年、残り三人は対照的に柄の悪そうな連中だ。
座り込んだ少年の周りに散乱するのは割れた皿の破片やこれから食べるはずであった食事。その前に三人が立っているという……実に理解し易い状況。
「おいおい? ぶつかった上にそれがオレの食いたかったやつの最後だと? っざけんなよあぁ!?」
「ひっ……!」
「あんたも運がわりぃよなー、コイツ腹が減ってると手に負えねえんだわぁ」
「そう言うお前だって服汚されてイライラしてんのが伝わるぜ……」
奇抜とまでは行かないまでも、真面目そうな生徒が多く居る場所ではそれなりに派手で目立つ格好をした三人が囲むように声を浴びせる。その度に少年が体を震わせて何かを言おうとするが、伝わる事はない。
しかしよくもまあ堂々とやる物だ、と昴はほんの少し感心。
「まあとりあえずだ……オレら三人分の飯、奢って貰おうか? お楽しみはそれからたっぷりとな。味わわせてやんよ」
「さっすがはセルディだ。食いもんの恨みってのは厄介だなあ?」
「僕、そんなお金……持って……」
「オレがたったそれだけで許してやるって言ってんだぜ? 別に一生って訳じゃねえんだからよぉ? ほら、さっさと金――」
見るからに悪役の笑みで手を出すセルディと呼ばれた少年。しかし、そんな状況ですら眼鏡の少年に手を差し伸べようする者は居ない。それが昴の琴線に触れたらしく――
「いい加減にしねえか。てめぇらみたいなの見てると……マジでムカついてくるんだけど?」
――言葉と共に、セルディの出した腕を横から掴んでいた。怒気を孕んだ視線と言葉。
「……ンだよお前? 見た事ねえ顔だな」
「名乗ってやる必要はないから名乗らない。ただ気に入らないから邪魔した。それだけだ不良ども」
「あはは! 何だかわかんないけど、面白いねぇ!」
「確かに……我々が誰だか知らないようだが?」
青っぽい髪をした少年が昴を凝視する。そんなのはお構い無しに言葉を続けた。この程度の威圧など女王の比ではない。
「ああ知らないね。だったら何だ? ……やるのか?」
掴んでいた腕を強く払い、睨みを利かせる。相手が悪ならば叩いても問題は無いという判断基準。今後の評判よりも今を乗り切る。
「……その言葉、そっくりそのまま……返してやるよ!」
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