ヒカリ←→アキラ 6(6月)

6月3日


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特にこれと言って何も無かった日だった事は覚えている。


『三枝君。こんばんは』

『こんばんは』

『週末課題、終わった?』

『う~~ん。あと、現代文だけ』

『もう! 文系なんだから、早く終わらせないと!!』

『そうなんだよね~』

『ひかりさんは? 終わった?』

『う~~ん。あと、数学の丸付けだけ~』

『そっか。お互い頑張ろうね!』

『うん』

『じゃあね』

『うん』


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今日はここまでだ。取り留めもない。何て言うことのない、そんなメッセージの応酬。それが楽しいのだった。たまらなく胸の辺りが、ぽかぽかする。


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修学旅行を挟んだからか、無害なことを感じ取ったからか。既に『ひかりさん』への不信感は、消え初めていた。


6月10日

何事もない、平和な日に、きちんと毎週訪れる。彼とのふれあいの時間。


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『三枝くん。こんばんは』

『こんばんは。ひかりさん』

『来週って何かあるっけ?』

『うーーん。これと言っては……』

『そうだよね~。なんか修学旅行終わっちゃって、これと言って楽しみもないなあ』

『そうだね~』

『あ、でも、化学の実験があるよ!』

『あ~。そう言えばそうだね~。でも、私、ちょっと化学苦手だな』

『そうなの? 俺は好きだけどな~』

『だって、たまに臭い実験とがあるじゃん』

『ああ。アレね(笑)。硫黄の奴』

『そうそう。先生も顔、歪めてたし(笑)』

『そう言えばそうだったね(笑)』

『じゃあ、明日から学校だし、寝ようかな』

『そうだね。俺も眠くなってきた』

互いにスタンプを送り合って、ラインを閉じる。


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う~~む。眠い……。


6月17日

酷い目にあった……。実験なんて2度とするか!! ささ、ラインの時間だ。


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『こんばんは。三枝君』

『こんばんは。ひかりさん』

『三枝君ってさ、趣味とかある?』

『突然どうしたの? う~ん……趣味かあ……。なんだろ? 駄弁ることとか?』

『ああ。なるほどね。いつも西部君と喋ってるもんね』

『よく知ってるね。そうだよ。幸平は中学からの友達なんだよね』

『そうなんだ。いいなあ、仲良しって』

『ひかりさんは? 趣味とかないの?』

『え? 私? 私か~』

『?』

『特に無いな~。友達も少ないし……。私』

『え? そーなの? 俺てっきり友達多いと思ってたよ』

『なんで?』

『ん? だって、ひかりさん。とっても話し上手じゃん』

『え? そーかな』

『うん』

『そう言われると、なんか自信でるなぁ』

『自信持って良いと思うよ!』

『ありがとう。じゃあ、そろそろおやすみ』

『うん。お休みなさい』


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ひかりさん、本当は友達多いんだろうなぁ


6月24日

友達なんて片手で数えるほどしか居ない……。こんな事バレたら嫌われちゃうかな……?


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『こんばんは。三枝君』

『こんばんは。ひかりさん』

『もう少しで、7月だね! 七夕に……、夏休みも来る!』

『そうだね。あ、ひかりさん家は、七夕やるおうちなんだね!』

『そうなの! 毎年、きちんと笹買ってきてやるんだ~。まあ、妹がまだ小さいってのもあるんだけどね』

『なるほど! 妹さんおいくつ?』

『今、小6だよ』

『そうなんだ! あ、そうだ。模試近いけど、勉強してる?』

『え? 模試? あ……、うんうん!』

『してるんだ! すごいなあ。俺は今から始めようかな』

『あ、うん。そうだね。お互い勉強しなきゃだし、今日はこの辺で……』

『うん! おやすみ』

『おやすみ』



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きっとひかりさんは頭も良いんだろうな~

ヒカリ──ひかり──光? 彼女は一体、クラスの中の誰なんだろう? 疑問は尽きないけど……。今はまだ結論を急がなくて良いのかも知れない。

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