ヒカリ←→アキラ 4(5月29日)

5月29日

朝のことだ。喉が渇いた私は、ホテルの1階にある自動販売機までジュースを買いに行った。そこには、なんと! 三枝君がっっっっ!! (キャ~~~~~)

彼を見ると、顔を真っ赤にしてしまいそうだったから、顔を見ずにジュースだけ買った。買おうとした。だけど、

「おっ。相楽か。おはよう」

いつも明るくて、気さくで、優しくて。か……(以下略)そんな彼は、さぞ普通の、ごく当たり前な事のように、朝の挨拶を私にしてくれたのだ。そう! 私!! 私に!!

「あ、あ、あ、ああ、あああ。う、ううううん。お、お、おおおお……おはよう……」

うわ。どもり過ぎ。あ、あれ? 顔、熱っ。耳まで真っ赤になってるのが分かる。

彼は……うわ~~~~。きょとんとしてる!? し、失敗した~~。

「じゃ、じゃあ!」

顔を伏せて、手だけ振って逃げる様に部屋まで走る。

買ったジュースも忘れて。


←→


朝のことだ。喉が渇いた俺は1階までジュースを買いに行こうとした。

そしたら、幸平が。

「俺のも…………zzz」

って! 寝言のような声ででパシリらせやがった……。くそっ。あいつ覚えとけ。

1階へ下りてく。

自販機の前で、どのジュースにしようか迷っていると、1人の女子生徒が階段を下りてきた。彼女は俺を気にも留めようとせずジュースを買う。

ん? 俺嫌われているのか? う~~む。あ、先ずは挨拶しとくか!! 本当に嫌われていると、いけないから自然体を装って。

「おっ。相楽さん。おはよう」

「あ、あ、あ、あ、あ、ああ。うううううん。お、お、お……おはよう……」

声を掛けたら、相楽はどもりまくった挙げ句、買ったジュースも置き去りにして、「じゃ、じゃあ!」と言って顔を真っ赤にして去っていった。う~~~む。分からん。


←→


その後、朝食を食べに、『ニライカナイの間』へ行った私を呼び止める声があった。

「あ、相楽さん。そこにいたんだ」

「ん? あ、あああ……」

もう飽きたと評判のこのどもり反応で分かって貰えただろうか。そう、三枝君だ。もう慣れてきた。うん。もう大丈夫。

「……三枝君。どうしたの?」

「いや、相楽さんさっき、買ったジュース忘れていったでしょ? はい。これ」

「ありがと~~~~」

きゃ~~~~~~~~~何て優しいの? 天使? 天使なの? 三枝君!?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る