伝言


管制官:「同士ガガーリン。視界はどうだ?」

飛行士:「地球は青かった」


管制官:「書記! 今の言葉をすぐ書記長に伝えてくれ」

書記1:「(急ぐのかな?)……ははっ!」


書記1:「伝言せよ。至急。青勝った」

書記2:「(青が勝つ? 暗号ならもっとぼかさないと)……ははっ!」


書記2:「伝言せよ。支給はアオリイカ」

書記3:「(イカなんかもろてもなあ)……ははっ!」


書記3:「伝言せよ。もろきゅうがあてにいいか」

書記4:「(飲みたくても休めないんだって)……ははっ!」


書記4:「伝言せよ。代休をあてにするか」

書記5:「(こいつ、またサボるつもりだな。粛清だ!)……ははっ!」


書記5:「伝言せよ。代償を赤くするか」

書記6:「(大小か。俺んちのマトリョーシカは両方とも赤だっけ)……ははっ!」


書記6:「伝言せよ。大小は赤かった」

書記7:「(赤色革命、ここに極まれり!)……ははっ!」


書記7:「書記長。同士ガガーリンから伝言です。大地は赤かった」

書記長:「そうかそうか。宇宙から見ても我が国は赤く見えるか! はっはっは!」


◇ ◇ ◇


 無数の無責任な伝言に埋もれて

 真実はどんどん劣化する

 それなのに世界が崩壊しないのは

 誰も真実を知らないからだ



【おしまい】

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