三態

「三態というのを知っておるかね?」

「さんたい、ですか?」

「そうじゃ」

「うー、なんだっけ?」

「物質の三態じゃよ」

「ああ、それなら分かります。気体、液体、固体」

「よろしい。ではお主の三態は?」

「僕のですかあ? さっきと同じですよう」

「ほう? なぜじゃ」

「涙やよだれは液体。溜息は気体、柔軟性のない体は固体」

「なるほど。わしから見るととんでもなく違うがの」

「えー?」

「変態で、態度が悪くて、悪態ばかり」

「それは一態ですぅ。首尾一貫」

「自慢すなあっ!」


 ぽかっ!


◇ ◇ ◇


【気体】

 やる気は圧縮することも希薄にすることも出来るが、気力というのは屁の突っ張りにもならない。気にし過ぎという割には過ぎるほど気を作れず、気が入らないという以前に入れられる気がない。配れる気も、吐く気もないしなあ。


【液体】

 人体の90パーセント以上は水で出来ているそうだが、何を飲んでもすぐに汗と小便で出て行ってしまうし、その割には水臭いと言われる。おまえは水物だよなあとこき下ろされるし、世の中水に流せないことばかりだよ。


【固体】

 頭も身体も、硬貨しか入ってない財布の中身もこちこちで、まるで柔軟性がない。堅けりゃそれで筋が通るかと思えば、叩かれ削られで、小さくされるだけ。だけど、どんなに小さくなっても結局固体なんだよな……俺ってのは。



【おしまい】

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