十円玉の裏

 宇治。平等院鳳凰堂にて。


「ねえ、パパちゃん」

「なんや?」

「十円玉の裏って、あれと同じなんやろ?」

「せや」

「あれを、どうやってここにコピーしたん?」

「お金作る工場には、どらえもんがおんねや」

「スモールライトで、ぴかって?」

「せやせや」

「パパちゃん、うそついたらあかんで!」


 ちっ。


「平等院鳳凰堂は、極楽浄土を表したもんや」

「ごくらくって、天国みたいなもの?」

「まあ、そやな」

「じゃあ、あそこだったら宿題がなくて、DSやり放題なんやね?」

「それがおまいの極楽浄土かい。ちんけやのう」


 とほほ。


「こら! 池に十円投げたらあかんで!」

「どして?」

「池は賽銭箱ともトレビの泉ともちゃうねんで? それに……」

「なに?」

「おまいがそうすると、外国のお客さんがみんな真似しよる」


 こ、こわ……。


「さ。十円玉の裏も見たさかい。行くでー」

「パパちゃん、ちょっと待って」

「どした?」

「十円玉の表には行かへんの?」

「どこや、それ?」

「あっちの立派な建物ちゃうの?」

「あれには十円じゃ入れへん」

「けっちぃ」

「そらそうやがな。極楽に十円で入れたら苦労せんわい」


 へえへえ。みもふたもあらしまへん。



【おしまい】

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